表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【大賞受賞作】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?~あなたがくれた幸せの呪い~  作者: 花澄そう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

281/283

時を超えた狂愛の檻


…………


……



「ディオン……」

照れたようにうつむくシエル。


「ディオン……大好き」

はにかんでほほを染めるシエル。


「実は、私……、前世を覚えているの。前世の両親は私に見向きなんてしない人で……」

俺に全てを知って欲しいと、突然そのような事を打ち明けてきたシエルは、頬に沢山の涙を流した。


「早く卒業して、ディオンと一緒に暮らしたい……で、お庭に沢山の可愛いお花を育てるの」

屋上で手を広げて笑顔で夢を語るシエル。


「あと半年だ、って?確かに、このままいけば後半年で卒業出来ると思うけど……でも、その半年が待てないのよ!」

口を膨らませてねるシエル。


「え?海?い……行きたい!そうだよね!学生最後の連休だもんね」

手を合わせて目を輝かせるシエル。


「うわぁ~。綺麗!見て見て~魚が泳いでる!凄い!あそこに亀もいる!!ちょっと、ディオン!笑ってないで、ちゃんと見てるの?」

シエルは海を指さしてはしゃぎながら、シエルばかりを見つめる俺に気づくと、少し照れくさそうに口を尖らせた。



どれも、尊いほどにかけがえのない瞬間だ……



あの時、あんな事が起こらなければ……

俺たちは、今頃……



「ディオン……もし、私が……。ううん……なんでもない……」

眉を寄せ、何か言いたげなシエルはうつむき口ごもった。


何か、言いたい事があるんだとすぐに分かったが、俺は無理に聞き出さなかった。


なぜなら、俺たちには、これから十分すぎるほどの未来が約束されているからだ。

だから、シエルが言いにくいことがあるのなら、いつか自然に話してくれる時を待てばいいと思ったんだ。


でも……これが大きな間違いだった。



翌週――

突然、シエルから1枚の紙を渡された。


「なんだ?この紙切れは」

「これで謎解きをしてほしいの」

「はぁ?なんで」


話を聞くと、シエルはこの紙切れを元に、世界中を回って暗号を解くゲームをしてほしいとお願いしてきた。


「ダリぃ。世界中なんて。どれだけ広いと思ってんだ」

俺はそう言って紙を突き返した。


彼女であるシエルの願いは叶えてやりたいけど……、これはあまりにも面倒だ。


「お願い!この為に頑張って世界中に仕掛けを作ったの!」

「は?お前、まさか……」

俺は口を歪めてシエルの顔に手を伸ばす。そしてほほを指で挟んた。


「おいシエル。お前、俺の知らない間に勝手に学園を出たな?」

「ご、ごめんなさい」

「俺はこんなお遊びをさせる為に魔力が見えにくくなる魔法と、瞬間移動を教えたんじゃねぇぞ」

「分かってるよ。もう勝手に出ないから離してっ」

その言葉を聞いて、すっと手を離してため息をつく。



シエルは手を後ろで組んで、上目遣いでうかがうように覗き込んだ。

「それより、やってくれるよね?」



「嫌だ」

「ええっ!?ケチ!凄く時間かかったのに!」

「知った事か!お前が勝手にやったんだろ」

そう言うと、シエルはパンパンに口を膨らませた。


「お願いっ」

手を合わされて一瞬戸惑った俺は、断固なる意志で「やらねぇ」と言って押してくる紙を再び突き返した。


「ねぇ。一生のお願いだからっ」

「一生は死ぬほど長げぇんだよ。もっと大事な時に取っとけ」


俺の言葉を聞いたシエルは、一瞬ビクっと震えて、瞳から光が消えたように見えた。

でも、すぐにいつも通りのシエルに戻り、それが見間違いだったんだと思った。


「い、今が大事なの!」

「第一、これを解いたら何があるんだよ」

「それは……解いてからの秘密だよっ!言ったら面白くないじゃん」

「まぁ……、そうだろうけど」

「本当に駄目なの?」

シエルはそう言って、真剣な眼差しを俺に向けてきた。

その時、このお願いはただのお願いじゃなくて、何かもっと深い意図があるのかもしれないと思った。


悲し気な目で見つめられた、俺はついに観念した。



「……分かった。やりゃーいいんだろ」



「やった!」

バンザイをして喜ぶシエルから魔法で紙をピッと取り上げ、シワを綺麗に伸ばした。



どうせ暫く休みだって学園から言われた所だし……



そう思い、俺は翌日から謎を解くために世界を回ることにした。

最初は順調だったが、解き進めるうちに、やたらと遠回りをさせられている感覚があり、無駄に時間がかかっていることに違和感を覚えた。


そして、半月かけて辿り着いたのは、なんとも小さな箱だった。


箱を開けると、中にはシエルからの手紙が入っていた。


シエルからの初めての手紙に、ワクワクしたような気持ちで開封し、読み進める。


だが、読み進めるうちに、次第に自分の顔がこわばっていくのを感じた。

なぜなら、この手紙は、まるで遺言状ゆいごんじょうように感じられたからだ。


俺との時間が本当に楽しかったことや、俺に対する感謝の気持ちが長々とつづられていた。


「私がもし……死んでも、来世で会いたい……?どういう事だ……」


最後の文字を読み終えた瞬間、胸に嫌な予感が込み上げ、俺はすぐに立ち上がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ