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【大賞受賞作】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?~あなたがくれた幸せの呪い~  作者: 花澄そう


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招かざる訪問者28


シエル目線――


『結婚しないって言わねぇんだったら、一生帰さない』

『なんで!?あなた、前から一体何なんですか!?』


『俺が……どういう思いで……っ!!……結婚なんてしてみろ。絶対お前をぶっ殺してやるからな』


…………


……


目元を覆い隠していた手を外すと、眩しい朝日が差し込んで眉をしかめた。


「……また……」

そうつぶやいてから再び目を閉じる。



長い髪のディオンの姿を見てから、こんな風に前世の夢を見ることが多くなった。


いつも断片的な映像。

最初は私が作り出した映像だと思っていたけど、それにしては上手く出来過ぎている。

だから、長年抜け落ちていた前世の記憶なんだと思うようになった。


ずっと、殺される前の記憶だけが思い出せなかった。

でも今、その記憶なぜかよみがえりつつあるようだ……



『絶対お前をぶっ殺してやるからな……』


明らかに、この発言をした人が犯人なんだろうと思う。


でも、何故かその発言をした人物の顔には、ずっともやがかかっていて、無理に思い出そうとすると決まってひどい頭痛に襲われてしまう。


しかも、その人物の髪型は長かったり、短かったりする。

と言う事は、結構長い付き合いだったんだろうか?時系列が全く分からない。



光に目が慣れて来た感じに、寝返ってからすっとまぶたを開けた。

すると、女の子らしい可愛い花柄の壁紙と、ポツンと置かれた一人掛けのソファが目に入って来た。


「うーん……」

身を起こして天井に伸びをすると、微かに波の音が耳に飛び込んで来た。


音に誘われて窓の外に目を向けると、そこにはまるで無数のダイヤモンドが散りばめられたかのように輝く、朝の海が広がっていた。


そんな景色が、先ほどまでの嫌な気持ちをそっと和らげていくのを感じた。



驚くことに、この場所はなんとディオンの別荘らしい。

あの衝撃の告白?をされた海辺から、何時間も空を飛び続けてやっと着いた、NIHONからとても遠い場所だ。


ここは、徒歩30分もあれば一周できそうな程の小さな島で、建物はここしかない。だからここは無人島という事になるんだろう。


別荘を持っていたなんて初耳で、初めて聞いた時は本当にひっくり返りそうなほどに驚いたのを思い出す。


確かに、ディオンは世界でたった2人しかいない大魔法使いだし、あのヴァイスという人は城まで持っているらしい。

だから、ディオンが1つくらい別荘を持っていてもなんら不思議ではないのだろう。



部屋を出てリビングに向かってみるが、そこにはディオンの姿はない。


「また居ない……」


ふとダイニングテーブルの上に目を向けると、そこにはもち手付きのバスケットがあった。

掛けられている布巾ふきんを外すと、玉子サンドが顔を出した。



やっぱり不思議だ。

ディオンは、私をここに連れて来て、一体何がしたいんだろう?


一緒に暮らそう、なんて言うから、ついつい自分の都合にいいように考えてしまったけど……



私は肩を落として、玉子サンド入りのバスケットを手にして別荘の外へと出た。


すぐにザザン……ザザン……と心地いい波の音がハッキリと耳に届く。

大きく深呼吸をすると、濃厚な潮の香りがした。

足元には、柔らかな白い砂浜がくすぐったい感触を伝えてくる。


私の目には、どこまでも広がる海が私の瞳に映り込む。


空と海の境界が曖昧あいまいなほどに澄んでいて、波は優しく岸辺に寄せては返している。

心が洗われるようなこの景色に、思わずため息が出た。




「ここの海、好きだな……」


ここに来て、3日経った。

でも、このコバルトブルーの海には毎回感動を覚える。


海を見て立ち尽くす私の横を駆け抜けるラブは、一目さんに海の中に入って小魚を上手に取りはじめた。

私はそんなラブを見て笑みをこぼしながら、砂浜に腰を下ろした。



横に置いたバスケットから、いつもの絶品玉子サンドを取り出し、パクリと1口食べると、口の中に新鮮な卵の味が広がって行く。


「美味しっ」


ふと淡い空を見上げると、宙にディオンの魔力が見えた。

「一体、なんの魔法をかけてるんだろう?」



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