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【大賞受賞作】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?~あなたがくれた幸せの呪い~  作者: 花澄そう


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招かざる訪問者22


今日は講師たちの仕事納めで、夕方から講師棟では盛大な打ち上げが行われていて、その賑やかな声がずっと聞こえていた。


戦勝パーティの時も、ディオンはワイングラスを手にしていたし、顔に出ないだけで酔っているのかもしれない。


意外とお酒好きなのかな?

それとも、今日もあのFクラスの講師に迫られて、たくさん飲まされた?


あの大きな胸に、締まったウエスト、曲線ラインから溢れる大人の色気。

そして私にはない、あの押しの強さ。

あの日のディオンを思い出すと、胸の中でモヤモヤした感情が膨れ上がっていく。


どうにもならない苛立いらだちがこみ上げて来て、私は思わず海面を強くりつけた。


すると、月の光を反射した水の粒がきらめきながら、しぶきとなってディオンに降りかかる。


「……冷たっ」


ディオンは突然の水しぶきに驚いた後、露骨ろこつ鬱陶うっとうしそうな顔を向けた。

でも、私はいい気味だと思った。



「何すんだよ。かかっただろ」

私は、そんなディオンにプイッと顔をらして口を膨らまして背を向けた。


「酔い覚ましにちょうどいいんじゃない!?」


すると、「誰が酔っ払いだ」という言葉と共に、私の腕に冷たい水が飛んできた。

ヒヤリとした冷たさが容赦ようしゃなくパジャマにしみ込んでいく。


振り返ると、私に指を向けているディオンが映り、即時に犯人が判明する。


「やったわね!」


私はすぐに水をすくって思いっきりディオンにかけた

……はずだったけど、ディオンはいつの間にかシールドをかけていたようで、私のかけた水は全部シールドを伝って下に流れていく。


なのに、ディオンはシールド越しに何度も水を飛ばしてくるから、ほほをパンパンに膨らませた。


「ず、ずるい!シールドを使うなんて!!」


そんな私を見ていたディオンは、ククッと笑った。

もっと怒るはずだったのに、その笑顔を見せられた私は、それ以上何も言えなくなった。


直後、一気に来た寒気にブルっと全身が震え、自分の肩を抱いた。


「さ、さむ……」


私の言葉を聞いた途端、ディオンは海面に足を浸け、バシャバシャと音を立てながらこちらに向かってくる。


目の前で立ち止まったディオンの瞳は、とても優しくて、「馬鹿だろ」とつぶやきながら私の手を握ってきた。



握られた手は驚くほど温かい。

れられてドキっと心臓が跳ねたあと、目をらして口をとがらせた。


「……ディオンがやったんじゃん……」


その瞬間、ポウっと体に光がまとったと思うと、寒さが一気に消えた。海面につけているはずの足からは、水の冷たさが感じられなくなり、パジャマもいつの間にか綺麗に乾いていた。


「すご……」


なんだか、納得できないようなモヤモヤを抱えたまま「あ……りがとう」と言うと、ディオンは穏やかに微笑ほほえんでみせた。


「ん」


ディオンは、一瞬たりとも手を離そうとしない。


やっぱり酔ってる。

だって、これが本当に酔ってないんだとしたら、なんだか……



「そういえば……ここに来て連れて来たのは、話があるからなんだよね?」




数時間前――

私が解除できないほどの強力なシールドをかけたディオンが、私の部屋に戻って来た。


それを待ち構えていた私は、すぐに『何!?このシールドは!どういうつもりなの!』と怒鳴りつけた。


なのに、ディオンはそんな私を無視して、私の手を握って来てこう言った。


『行こう』


直後、私の許可なく何度も瞬間移動を繰り返し、気づいたら目の前には夜の海が広がっていて……そして今に至る。



海というのに興奮してしまって、つい怒るのを忘れてはしゃいじゃった……




「ああ、そうだ。話をしたくてここに連れて来た」

なんで学園内だと駄目なんだろう?


「その話って、なんなの?」


ディオンの話を聞いた後、もしタイミングがあったとしても、復讐の話は今度にしよう。

大事な話だからこそ、酔ってない時の方がいいと思うから……



「シエル……」


ディオンから熱を帯びた眼差しが向けられる。

その瞳にドキッとして思わず目を大きく開くと、ディオンが私の髪の間にそっと指を差し込んできた。

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