招かざる訪問者21
「痛っ」
手にビリっとした鋭い痛みが残る。
「……は?」
なんだ、今の……
「……まさかっ!」
次の瞬間、俺は奴に嵌められたんだと分かった。
…………
……
あれから、何時間も解除魔法を試みて、展望台から出てこれた頃には朝焼け空だった。
「マジかよ……」
もう朝じゃねぇか。
朝日を見ては、俺を嵌めた奴にとてつもない怒りが湧き上がる。
俺の魔力が今、通常の半分以下だと言う事もあるが、そうでなくても手こずる程に高度な魔法だった。
これは、上級魔法使いなんてレベルじゃねぇ。
まさか――ヴァイスが!?
いや、でもあいつは勝手に参戦したことが明るみに出て、NIHON側からの酷いバッシングを受け、今は塔の上部に軟禁されているはずだ。
じゃあ、一体誰が……
「とりあえず、シエルの部屋にかけたシールドを解除しに行かねぇと」
尻尾がつかめなかった事に残念な気持ちを抱きながらも、気持ちを切り替えるために軽くため息をついた。
シエルでも解除できないくらいの強力なシールドを何重もかけたから、このままだとあいつ、部屋から出られずに泣きべそをかくかもしれないしな。
そう思った次の瞬間、俺の目に飛び込んできたのは――
シールドが一切かかっていない、無防備なシエルの部屋だった。
そんな光景に、心臓が凍りつくような衝撃が走り、息が止まった。
「…………は?」
即座に出窓を開けて部屋に飛び込むと、急いで布団をめくった。
でも、そこにシエルの姿はない。
「おい!シエル!どこにいるんだ!」
浴室のドアを開けても、熊野郎すらいない。
部屋は一切荒らされた形跡がなく、シエルの魔力の痕跡すら感じられない。
この部屋どころか、この学園全体からも、シエルの魔力が完全に消え去っていた。
魔力が感知できないということは、それほどに遠くにいるのか……あるいは、もう――この世にはいないかのどちらかだ。
「シエル……」
信じがたい現実に、血の気が一気に引いていき、目の前が真っ白になった。
ディオンが展望台に閉じ込められていたその頃、シエルは――
私の目の前には、大小3つの月が水平線に浮かび、その柔らかな光が夜の海を幻想的に照らしている。
ザザン、ザザンと心地よいリズムで押し寄せる波音が、まるで自然の楽器のように静かな夜を彩り、暗い水面に宝石のような煌めきを散りばめていた。
「ひゃー!海だ!」
砂浜では、ラブがしぶきを上げて無邪気に水浴びを楽しんでいる。
即座に出窓を開けて部屋に飛び込むと、急いで布団をめくった。
でも、そこにシエルの姿はない。
「おい!シエル!どこにいるんだ!」
浴室のドアを開けても、熊野郎すらいない。
部屋は一切荒らされた形跡がなく、シエルの魔力の痕跡すら感じられない。
この部屋どころか、この学園全体からも、シエルの魔力が完全に消え去っていた。
魔力が感知できないということは、それほどに遠くにいるのか……あるいは、もう――この世にはいないかのどちらかだ。
「シエル……」
信じがたい現実に、血の気が一気に引いていき、目の前が真っ白になった。
ディオンが展望台に閉じ込められていたその頃、シエルは――
私の目の前には、大小3つの月が水平線に浮かび、その柔らかな光が夜の海を幻想的に照らしている。
ザザン、ザザンと心地よいリズムで押し寄せる波音が、まるで自然の楽器のように静かな夜を彩り、暗い水面に宝石のような煌めきを散りばめていた。
「ひゃー!海だ!」
砂浜では、ラブがしぶきを上げて無邪気に水浴びを楽しんでいる。
私も誘惑に負けてそっと足を海に浸してみると、瞬時にひんやりとした感覚が広がった。
「ひぇ……。冷たっ……」
波が足元を包み込み、砂の柔らかな感触が足裏に心地よく伝わってくる。
「当たり前だ。何月だと思ってんだ」
砂浜側に立つディオンは、「ん」と言って握手するように手を向けてくるから、なんの手だろうとジッと見る。
「何見てんだ。さっさと出ろ。風邪ひくだろ」
「えっ、全然大丈夫だよ?冷たいけどそこまでじゃないし」
「んなわけねぇだろ」
「本当だよ」
私の返事に、ディオンがため息をつく。
「そういえば、ディオンと外に出るの……、お祭りの日ぶりだね」
今回は、私の意志に関係なく連れて来られてしまったけど……
「祭り?」
「ほら、建国祭の」
「っ……、ああ」
後頭部に手を回した後に出て来た歯切れの悪い返事に、またもや追及するほどでもない小さな違和感を覚えた。




