招かざる訪問者19
ディオン目線――
『つい今さっきの話だよ?』
さっき一瞬だが感じた。
だから絶対まだ近くにいる!
ずっと探し続けていた、俺と酷似した魔力の主が……
校舎の屋上に移動をした俺は、再び魔力に意識を傾ける。
すると、学園内を転々としているような魔力の残像が映った。
いるっ!しかもかなり新しい。
誰だ。こんな馬鹿げたことをする奴は。
今度こそ捕まえて吐かせてやる!
ずっと、俺が知らない魔法を使って、魔力を真似をしているだけだと思っていた。
でも、風貌まで真似ていたなんて……
なんの為にそんな事をしている?何が狙いだ?
魔力を辿って追い付いたと思うと、魔力はそこで途切れていた。
魔力の残骸のある屋根の上に手をついて舌打ちをする。
「チッ。また見失ったか」
これで何回目だ?
魔力が微量過ぎて、まるでハンデありの追いかけっこみてぇだ。
俺の魔力がもっと回復していたのなら、違ったんだろうが……
魔力の途切れ方からして、奴は2、3回は瞬間移動を使っている。
普通の魔法使いなら、2、3回も使えばぶっ倒れるところだ。
なのに――感じるのはごく微量の魔力。
いや、逆か?
逃げようと瞬間移動を何度も使ったせいで、もう魔力がほぼ残っていないのか?
もしそうなら、もう終わりは見えているはずだが……
なんか嫌な感じがする。
目を閉じ、再び魔力に意識を集中させる。
すると周囲の静けさの中で、グランド側から俺にそっくりな魔力が感じられた。
それを辿るように飛び立ち向かうと、グランドの奥側にある展望台が最も魔力が濃く感じた。
展望台の前に降り立った瞬間、その下部からぶわっと浮き上がる魔力が見えた。
「いる……。何年も、俺の真似をし続けた奴が……」
奴を逃がさないよう、先に展望台全体をシールドで包み込む。
「これで奴は、この場から逃げることはできない」
やっと、その姿を拝む瞬間が来る。
内なる興奮を感じて口角が吊り上がった、その時――
「うっ……」
不意に目の前が揺らぎ、軽い眩暈が襲ってきて反射的に頭を抱えた。
「くそ、魔力を使いすぎたか……」
視界が霞み、足元が不安定になる。
体がクラクラと揺れながらも、奴がすぐそこにいるという事実に、自分を奮い立たせた。
目を閉じ、深く息を吐いてからドアを開ける。
すると、やはり半地下に向かう階段の方から魔力を感じた。
半地下はグランドで使う備品倉庫になっていたはずだ。奴はそこに……?
魔力残量の計算もせずに逃げる為に限界まで瞬間移動をし、俺から逃げきれなくなって、魔力が感知されにくいとされる地下に身をひそめたか?
いや……、この俺が何年も追いかけ続けて捕まえられなかった奴が、そんなマヌケな事をするわけがねぇ。
ってことは、これは――罠か?
罠かもしれないと分かっていても、長年追いかけ続けた奴のしっぽを掴めるかもしれないのに、ここで引き返す馬鹿なんていないだろう。
俺は念のため体に防御シールドを張り、細心の注意を払いながら備品倉庫のドアを開けた。
中は真っ暗で何も見えない。
そして今のところ、攻撃が飛んでくる気配はない。
だが、確実にここに――何かがある。




