招かざる訪問者16
夜、私はベッドに横たわり、目を閉じて眠ろうとしていた。
けど、遠くから聞こえる賑やかな声に、なかなか眠れない。
今日は講師たちの仕事納めの日だったらしく、女子寮の向かいにある講師棟で打ち上げが行われているようだ。
ふと目を開けて、机の上に並んだ誕生日プレゼントの数々に目をやると、自然と微笑みがこぼれた。
そして、自分の手首を布団からそっと出して見つめた。
「ふふ……」
私の手首に付いているブレスレットは、月明かりを受けてキラキラと輝いている。
「嬉しい……」
ディオンが、こんな素敵な物をくれるなんて……
私は微笑みながらブレスレットにキスをした。
今夜はなかなか眠れそうにないかもしれない……そう思った時、視界の端で何かが動いた気がした。
そちらに目を向けると、薄暗い部屋の中に大きな黒い影が見え、一瞬ドキッとする。
でも、目を凝らすと――
「ディオン!」
私は勢いよく起き上がった。
本当に来たんだ。
『言いたい事があるなら夜でもいいから来て』って自分で言っておきながら、無言で現れただけでこんなにもビックリしてしまうなんて。
いや、いきなり話しかけられても結局は驚いてしまいそうだ。
「起きてたんだな」
「……うん」
プレゼントがあまりにも嬉しくて興奮してた……だなんて、さすがに恥ずかしくて言えないけど。
「ディオン。さっきは言いそびれたけど、このブレスレットありがとう。凄く嬉しかった」
ブレスレットに触れながら目を細めて言うと、「ブレスレット?」と眉をひそめられた。
「え……?」
ディオンは、私の手首についたブレスレットを見るなり怪訝な顔に変わっていく。
そんな様子に、訳が分からなくなる。
「ほら、さっきディオンがくれた……」と説明すると、ディオンの目が恐ろしい程に吊り上がった。
その目を見た途端すくみ上がって、私はそれ以上何も言えなくなった。
な……なんなんだろう?
私、何か気に障る事言った?
「は、話があるんだよね?」
「……えっ、ああ……」
歯切れの悪い雰囲気で後頭部をかくディオンを見て、今がタイミングなのかもしれないと思った。
「実は、私も話があるの。だからディオンの後でいいから聞いてほしいんだけど……」
今度こそ言う!機会が来たら言おうと、前から決めていた。
私が復讐を成し遂げようとしている事を――
全部打ち明けて、ディオンへの疑いを晴らしたい!
私の言葉を聞いたディオンは目を細め、すっとこちらに手を差し出してきた。
その行動に不思議に思った時、ディオンは驚くことを口にした。
「じゃあ、とりあえず移動しよう」
「え……移動!?」
移動って、学園から出るって意味だよね?
正直凄く出たいけど、もうこんな時間だし……
「ここで話せないような話なの?」
窓だって閉まってるし、ディオンお得意のチート魔法を使えばいいのに。
「ここだと……」
「ここだと?」
ディオンがふと私を見つめる。
その瞬間から、ディオンの視線が私に固定された。
次第にディオンの目に熱がこもっているように見えて来て、私はなんだか恥ずかしくなってしまった。
「な……何?」




