招かざる訪問者14
「あわわ……」
「すげーな。それ全部プレゼントか?」
すぐに体勢を持ち直した私は、ホッとため息をつきながら机の上にプレゼントの箱をそっと置く。
「う、うん」
私は、平常心を装いながらも、内心凄く緊張していた。
それもそのはず。
ずっとディオンを避けに避け続けていて、こうして2人っきりになるのは、ディオンが目覚めた日ぶりだからだ。
「ふぅん……」
ディオンは、何故かじっとそのプレゼントを見つめている。
「な、何か用?」
目を合わせずに聞いてみるが、返事はない。
気になって横目でディオンを確認すると、迷っているような、戸惑っているような……そんな表情がこの瞳に映り込んだ。
どうかしたんだろう。
「ディオン?」
私は首を傾げて質問した。
「やっぱ、なんでもねーわ」
「え?」
どこかそわそわしていて、なんでもないようには見えない。
と思った時、背中側でノック音がした。
「シエルー、ご飯行こー」
それは、メイの声だった。
咄嗟に私は、「う、うん!ちょっと待って」と答える。
ドアからディオンに視線を戻すと、ディオンはグイっと顎でドア側を差した。
「いい、行け」
「でも……」
わざわざ来るなんて、何か特別な理由があるはず。
そうでないのなら、私が避けていたことを問い詰められる?
「あいつが待ってんだろ」
「そうだけど……。あっ、じゃあ先行ってもらうよ」
私も、そろそろディオンに色々と話さないと駄目だと思っていた頃だし。
ドア側に振り返ろうとすると「いや、いい」と、引き止められる。
え?いいって……
振り返ると、全然いいという顔をしていない。
一体どうしたの?ディオンらしくない。
「何かあるから、ここに来たんでしょ?」
眉を寄せて問いかける。
「まぁ、な……」
ディオンの様子は、やっぱり違和感がある。
「なぁ、お前って、なんで俺の事……」
その時、ディオンの言葉を遮るようにメイの大きな声が響いた。
「シエルー?まだー?」
その声を聞いたディオンは、手で払いのけるような仕草をして、もう片方の手で顔を覆った。
「もういい、早く行け」
「わ、分かった」
これ以上メイを待たすのも悪いし……
「私に何か言いたい事があって来たんだったら、夜でもいいから来て。待ってるから」
そう言って背を向けようとしたとき「待て」と言われる。
「何よ、『行け』って言ったり『待て』って言ったり……」と、困惑しながら振り返ると、黒い何かがこちらに向かって飛んで来て、思わずそれをキャッチした。
自分の手の中を見ると、そこには手の平にギリギリ収まるサイズの黒い箱があった。
「え……?何、これ……」
「やる」
ディオンは出窓の外に顔を向け、口元を覆ったまま、ぶっきらぼうにそう言った。
……えっ……
これって、まさか……




