招かざる訪問者13
「学園の規約違反を犯したことを自首し、本日付けで塔入りしたとのことです」
えっ？自首……？どうして……
僕は、講師の言葉を聞いた瞬間、信じられない気持ちで固まってしまった。
そして、今までの自分の選択は間違っていたのではないかと後悔した。
翌日――
偶然、彼女が好きだったお店の前を通りかかった。
休日には、よく彼女の姿がここにあった。
そんな時、僕たちは気軽に立ち話でも楽しんだものだ。
だからだろうか、今日もいつものように彼女がそこにいるんじゃないかと期待してしまった。
けれど、そこには彼女の姿がない。
分かっていたはずなのに、なぜか足が勝手に動いて、お店の中にまで入ってしまった。
隅々まで彼女を探してしまう自分に、少し呆れてしまう。
やっぱり居ないと分かった途端、自分の肩が落ちるのが分かった。
10年以上も一緒に過ごしてきたのだから、当然と言えば当然かもしれない。
永遠の別れではないのに、まるで心にぽっかりと穴が開いたようだと思った。
彼女の何気ない日々の笑顔がふと浮かび上がり、心が乱れる。
僕の中で、思いのほか彼女の存在はとても大きかったようだ。
「はぁー。……どっちが依存してるんだろうな」
…………
……
多目的棟の一室に呼ばれて扉を開けた瞬間、小さな破裂音がして、思わず目を閉じた。
「ハッピーバースデー、シエル！」という明るい声が聞こえ、ゆっくりと目を開けると紙吹雪が舞い上がっていた。
そして目の前には、メイやローレン、そしてDクラスの新しい友人たちの笑顔が広がっている。
「……えっ？な、何？」
すると、メイが自分の手を隠すように近づいてくる。
「何って、今日シエルの誕生日でしょ？忘れてたの？」
「わ、忘れてた……」
朝、両親からの手紙でその事を思い出したのに。
ふと部屋を見渡すと、全体は淡いピンク色で統一され、たくさんのバルーンやフラッグガーランドで華やかに飾られていて、目を見開いた。
「可愛い……」
そう呟くと、メイが自慢げに笑った。
「でしょ！？この部屋、みんなで考えて飾りつけたんだよ！」
黒板には『HAPPY BIRTHDAY CIEL!!』とチョークで可愛らしく描かれている。その周りには、ケーキやクラッカーなどの絵が色とりどりに描かれていた。
私の為に……
心の中で感謝と喜びが込み上げてくる。
すると、メイの隣に来たDクラスの友人が、背中から可愛くラッピングされた小さな箱を取り出した。
「シエルちゃん、18歳のお誕生日おめでとう！」
「あ……ありがとう」
受け取ると、メイがＤクラス友人を肩で小突いて目を吊り上げた。
「ちょっと！私が先って話だったでしょ！」
「え～！そうでしたっけ～？」
と、しらばっくれる様子のＤクラス友人。
「私がどれだけシエルのことを考えて、このプレゼントを選んだと思ってるの！」
「私だって授業中まで考えてたんだから！」
「2人とも何してるの。せっかくのお祝いの場なのに」
呆れた顔をしたローレンが、２人の間を割るようにして現れる。
「シエルちゃん、お誕生日おめでとう」
ローレンが照れたようにプレゼントを渡そうとすると、その瞬間、他の友人たちも一斉にプレゼントを差し出してきた。
それに驚いて思わず目を見開いてしまう。
みんなが次々にプレゼントを手渡してくれる姿に、胸がいっぱいになる。
じわっと目頭が熱くなって、思わず目元を覆った。
「みんな……本当に、ありがとう」
こらえきれずに涙が溢れてしまった。
「あー！シエルちゃんが泣いてる～」
「シエルン～！」
…………
……
夕食前、一度自分の部屋にプレゼントを置きに帰ると、出窓に座って赤紫色の夕日を浴びるディオンが居た。
その姿を見た瞬間、驚きのあまり体勢を崩し、プレゼントを落としそうになった。
