Fクラス-14歳-3
「え?なんだろう?」
メイが首を捻ると、すぐにポンと手を打つ。
「あっそうだ!講師に頼まれてた、あれか!」
「えっ!?」
え!?まさか……メイ、行ったりしないよね!?
内心めちゃくちゃ焦る私をよそに、メイはペロリと舌を出した。
「すっかり忘れてた!私行くね」
ショックを受けている私の耳元に、メイが顔を寄せて言う。
「明日、サオトメ様との関係を教えてよね!」
「えっ?」
いやいや、何の関係も無いよ。
知ってるでしょ!?私が男子とは交流してない事を。
「じゃあ!また明日ね~」
メイは、私に誤解を解く暇も与えずにこの場から去って行ってしまった。
メイに伸ばした手が空気を掴むと、「じゃあ行こうか」と声をかけられ、今度は肩がぴょんと飛び上がった。
「はっ……はいぃ」
完全に断るタイミングを逃してしまった。
どうしよう。今さら断れない。
でもこんな綺麗な人と2人っきりだなんて……
相手はまだ10代なのに、あまりの美しさにドキドキしてしまうのが何とも言えない複雑な気持ちだ。
頭を悩ませている私の隣で、サオトメさんは指をクイッと曲げる。
すると次の瞬間、手にしていた本の重みがスッと消えて目の前の本が宙に浮かんだ。
「わぁ!う……浮いてる」
これが噂の浮遊魔法っ!?凄い!
浮遊魔法が使える人はとても少ない。
魔力だけじゃなく、ある程度のコントロール力も必要な難しい魔法なんだとか。
そんな魔法をほぼ同い年で使いこなしてるなんて、さすが、飛び級を出すかもしれないと騒がれているだけの事はある。
「女子寮までで大丈夫?」
ニコッと柔らかく微笑まれて、胸の奥が鷲掴まれる。
「はっ、はい」
普通にしたいのに、さっきから声が勝手に上ずる。
「あ……りがとうございます」
私は歩き出した彼を見て、私は心の中で叫んだ。
あー!
もう、どうにでもなれ!!と。
寮に向かう長い道で、サオトメさんと色々な話をした。
「本が好きなんだね」
そんな彼の言葉に、私は目を丸くしてしまった。
なぜかというと、本当は『本』が好きなんかじゃなくて、復讐のために調べ物をしているだけだからだ。
前世では漫画しか読んだことがなかったし、今でも文字ばかりの本は正直苦手だ。
だから、なんと返事していいか分からず、とりあえず笑顔で誤魔化した。
すると、サオトメさんの大きな目がさらに大きくなり、慌てた様子で口元に手の甲を当てた。
その仕草に思わず小さなハテナマークを浮かべてしまう。
「そ、そう言えば、まだ名前を言っていなかったね」
少し照れたように微笑みながら彼は言った。
「僕はBクラスのサオトメ・ロレンツォ。ローレンって呼んでくれると嬉しいな」
「私はタチバナ・シエルって言います。クラスは…………まだ、Fクラスです」
恥ずかしさで、クラス名だけうんと小さな声になってしまう。
「私の呼び方は、好きに呼んでもらって大丈夫です」
「シエル、かわ……良い名前だね。じゃあシエルちゃんかな?」
頬をポリっと掻いた彼が、唐突に私の名前を呼ぶから、またドキっとしてしまう。
「いつも、こんなに本を読んでるの?」
「はい」
「そうなんだ。僕も見習わないといけないね」
「い、いいえ。私は勉強の為というより……その、ただ知りたいだけで……」
「いいね」
「え?」
「知識欲が強いのって、いい事だと思うよ」
知識欲……そうか。そう捉えられるんだ。
「私、本当はもっと色々な事を知りたいんです。正直、もっと専門的な本を読んでみたいんですけど、この学園には、あの図書館にある本しかないので……」
ここからバレずに出る方法や、前世に戻れる可能性について書かれている本は、今のところ見つからない。
でも、最近読んだ本で『平行世界』というものがあると知った。
前世に戻るには、この『平行世界』についてもっと詳しく調べる必要がありそうなんだけど……あの図書館の本だけだと、もう限界のようだ。
瞬間移動についてもそう。
仕組みやメカニズムについて書かれた本はあるのに、実践方法や具体的なやり方は一切書かれていない。
この学園では手紙の内容もチェックされてるようだし、図書館の本も同じようにチェックされているのかもしれない。
「もっと専門的な本……。一応、学園内にあるとは聞くけどね」
「え?」
学園内に……!?
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