招かざる訪問者7
それは、今ディオンが犯人だと思っているから?
アランがとってもいい人で、一緒にいると楽しいから?
それとも、命をかけて……助けてくれたから?
アランの熱意に、眉が寄る。
「あんな奴より、絶対に幸せにしたる!」
アランの宣言通り、私はアランと一緒になら、幸せになれる気がする。
笑顔の絶えない未来が容易に見える。
でも……
私は、ディオンが私を殺した犯人だという疑いがあっても、やっぱりディオン以外に考えられない……
アランが真剣だからこそ、私はその気持ちには応えれない。
「ごめん……なさい……」
私も、それほどにディオンが好きだから……
ディオン目線――
仕事を終えた俺は、共有の講師室から見える下級クラス棟の方から賑やかな音が聞こえてくることに気が付いた。
「なんだ。下級クラス棟が騒がしいな」と呟くと、唯一講師室に残っていた下級クラスの講師が答えた。
「下級クラス用のパーティですよ」
「下級クラス用のパーティ……?」
「ほら、今やってる戦勝パーティのカモフラージュの」
「ああ」
なんかそういう事を教頭が言ってたな。
「カミヅキ講師は行かれないのですか?」
「ああ」
パーティなんて面倒せぇ。
俺が共有の講師室から出ようとすると、「今回はすごく美味しいお酒が多いらしいですよ。なんでも、ヴィンテージもののワインがあるとか」と言ってくる。
『ワイン』という言葉を聞いただけで、前回のパーティで女みたいな顔をした奴がシエルに迫った事を思い出した。
大丈夫だろうな……?
…………
……
結局パーティ会場に来てしまった。
「いやぁ~まさかカミヅキ様が来られるだなんて。それでしたら、もっと他も豪華なものを用意しておけばよかったです」
俺の横に引っ付いてペチャクチャと喋る背の低い教頭を見下ろす。
「ちなみにこちら、オールドヴィンテージワインでして、とても味わい深いので、ぜひカミヅキ様にも味わって頂きたいです」
教頭は俺の手にワイングラスを渡して来た。
「なぁ」
「はい。どうされましたか?」
「どうして下級クラス生に戦争の事を隠してるんだ?」
「その理由はですね、かなり昔にさかのぼります。
国が一部の学園生徒を戦争に参戦させると決めて間もない頃、生徒の反乱や頻繁な殺し合いが起きたんです。そのせいで、出陣前には生徒がボロボロになり、しかも生徒数も減ってからのスタート。その年の戦況は言うまでもなく、ひどいものでした。
反抗的な態度は特に年齢が低い生徒たちに強く出たため、参戦しない下級クラス生には不必要な不安を与えないよう、戦争が始まる直前に参戦する生徒だけに告知するようになったんです」
長いな。
「なるほどな。告知を直前にしているのは、反乱対策という訳か」
「はい、そうでございます。反乱には準備時間が必要ですから、あえて生徒にその時間を与えないようにしているんです。とはいえ、そのせいで生徒たちは本格的な実践訓練を受ける期間が短くなり、最後は急ピッチで訓練することになりますが……学園長は、それでも直前に伝える方が良いと判断しております」
「……そうか」
「カミヅキ様。そんなお話より、もうお食事はお済みですか?」
「いや」
「それはよかったです。今日はこの日のために一流のシェフを学園にお招きしております……そのシェフは、実は私の甥なのですが……」
教頭が自慢げに話しだした頃、テラスに出たシエルを追いかける転校生の姿が目に入った。
あいつ……
イラつく気持ちで、手にしていたワインをグイっと一気に飲み干す。




