招かざる訪問者5
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私は、学園に戻って来てから両親に毎日手紙を書いている。
どこまでの内容なら両親に届くのかが分からないから、色々な書き方で試しているところだ。
魔力が暴走した事や、戦地から帰ってきたこと。
そして――
国から戦功章として金の表彰板をもらった事など。
筆を執る私に、手紙の横でちょこんと座るラブのつぶらな瞳が向く。
「どうしたの?ラブ」
そう言って指で頭を撫でる。
ずっと心配だったラブは、元気だった。
戦中に預かってくれていたクリフおじさんの話では、ほんの数時間だけ体調が悪かったようだけど、それ以外は元気だったそうだ。
きっと体調が悪かったのは、私が――
魔力に覚醒した時の影響だと思う。
戦地から帰ってきた私の髪は真っ白で、そのせいで沢山の人に驚かれた。
そしてすぐに、魔力に覚醒だと診断された。
また管理事務員の誤診だと思ったけど、その話をこの前ディオンにしたらこう言った。
『今回ばかりは、誤診なんかじゃない』
『……へ?』
『あの時のは……、本物の魔力の覚醒だ』
『う……嘘っ』
『元々学園でトップクラスの魔力を持っているのに、そこからの覚醒なんて通常はあり得ないが、長年魔道具で抑え込まれていた膨大な魔力が原因で、通常ではありえない現象が起きてしまったんじゃねぇかと思う。魔法は、なんだかんだ言ってまだまだ未知だらけだしな』
信じられないけど、私は正真正銘の魔力の覚醒者になってしまったようだ。
「よし、出来た」
大好きなパパとママへ、と書いた手紙に封をする。
すると、背中側からノック音が聞こた。
「シエルー。そろそろ戦勝パーティに行くよー」
その声はメイのものだった。
「うん」
…………
……
重い会場のドアをメイと共に開けると、賑やかな音楽が耳に飛び込んできた。
高級そうな料理や、いつも以上に華やかな会場の飾りつけが目に入り、1週間前に戦地にいたなんて嘘みたいな光景に、呆気にとられる。
戦勝パーティ会場を見回したけど、下級クラスの生徒はいなかった。
当然だ。下級生であるルイーゼ達は、私たちが特別野外活動に行っていたと思っているのだから。
ちなみに私を襲った男子達は、指揮官から学園に報告され、帰還するなり塔に入れられた。だから今は不在だ。
「カミヅキ様ぁ~」
そんな台詞が耳に入ってきて、自然と目が行く。
すると大きく胸の開いた、タイトな黒のロングドレスを着たFクラス講師が映った。そして、その隣にはディオン。
ディオンは品のある黒のスーツを着ていて、長い黒髪を後ろで束ねている。既に周りは女生徒だらけだ。
Fクラス講師は、大きな胸を見せつけるようにしてディオンに迫っているのに、ディオンは嫌がる様子も見せずに何やら話をしている。
そんな2人がとてもお似合いに見えて、思わずムッとしてしまう。
すると、ディオンとバチっと目が合って、思わずそっぽを向いてしまった。
再び目を向けると、もうディオンは女生徒の方を向いていた。
その事に更に怒りが湧く。
キスまでしてきたくせに!なんなのよ!
ふと、これまでのキスを思い出してしまい、顔にぼっと火がついた。
あああーー!
恥ずかしくなって脳内の私が頭を抱えて叫ぶと、次に私を殺した奴の言葉が浮かび上がってくる。
『あれぇ?まだ生きてんの』
『早く死んで』
……まただ。
最近、殺される直前の事ばかり思い出してしまう。
それもこれも……
長く艶のある黒いディオンの髪に目を向ける。




