招かざる訪問者3
「え?」
「お前って、本っ当に馬鹿だな!!」
えぇ!?いきなり何!?
「元々馬鹿だと思ってたけど、あそこまでだとは思わなかった!」
「な、なんの話……」
「ヴァイスに攻撃仕掛けたり、跳ね返す事も出来ねぇくせに、あの攻撃の前に立ち塞がったことだよ!あんなの、どう考えても自殺行為だろ!」
「うっ……」
図星を突かれて小さくなった。
「だって……」
「だってじゃねぇよ!俺はお前の用心棒じゃねぇんだよ!」
「そんなの分かってるよ」
「分かってねぇから言ってんだろうが!口答えすんな!」
すぐに人差し指と親指で輪っかを作った手が、私の額目掛けて伸びて来る。
間もなく来るだろうデコピンに、私はギュっと目を閉じた。
でも、何も起きない。
不思議に思って薄く目を開けると、そのままの体勢で戸惑い、固まっているディオンが映り込んだ。
「あれ……?」
そんな様子にハテナマークを浮かべると、ディオンはその手を何も無かったかのようにポケットにしまい、目を逸らした。
不思議な気持ちでノーダメージの額に手を当てる。
「やる気が失せた」
ディオンの行動にキョトンとしてしまうと、さぁーっと遠くから木の葉が擦れる音が近付いてくるのが聞こえた。
そして、その音を生み出していた風が、今度は私たちの髪をなびかせた。
艶のある黒く長い髪が風にあおられる様子を見て、私は耐えきれずに口を開いた。
「……ねぇ」
「ん?」
「なんで、髪がそんなに長くなったの?」
「長くなったんじゃねぇよ。俺は元々この髪の長さだ」
「えっ!?そうなの!?」
じゃあ今までのは!?
「あんまり知られてねぇけど、髪に魔力が宿るんだ。分母が小せぇとほぼ意味ねぇけど、俺くらいになると長い方が効率がいい。でも、俺はヴァイスや学園長みたいに長げぇままなのは鬱陶しいから、魔法で短く見えるようにしてんだ」
「もしかして、Sクラスの魔力暴走があって抑え込んだ日も、その髪型だった?」
ディオンは私の言葉を聞いてから眉をしかめて宙を見上げる。
「……あー、確かそうだな。結構魔力持ってかれたし」
「そ……うなんだ……」
あの姿は、魔力が減ったディオンの後ろ姿だったんだ。
それだと、いくら探しても見つからないよね。
「それがどうしたんだ?」
覗き込まれてふるふると首を振った。
「なんでもない」
「なんか今日のお前、変だな」
そう言われて胸がギクっとなる。
「ディ……ディオンは……」
「ん」
もし、本当にディオンが犯人だったとしたら、こんな質問自体、タブーなのかもしれない。
でも、この見た目や声を聞いても、直感はディオンを犯人だと囁く。
それでも、これまで私が見てきたディオンは、どうしてもそう思えない。
私は、自分のこの目で見て来たディオンを信じたい。
そう思い、私は静かに口を開いた。




