Fクラス-14歳-2
「……何が言いたい?」
「私は、ご存じかもしれませんが、学園始まって以来の最弱の魔力と呼ばれています!現に全くといっていい程まともに魔法は使えません!私は世の中的に見れば完全に無害です!だからこの学園から解放してください!」
学園長は、私の言葉を聞くと大きなため息をつく。
「馬鹿馬鹿しい。そんな事が出来るわけないだろう」
「だって、私は……」
「魔力の多い少ないには関係なく、魔力を持つものは卒業するまでは学園を出すことは出来ん。これは国の決まりだ。異例は一切認めん!」
その後もかなり粘ったけど、結局魔法で学園長室から弾き出されてしまった。
魔力の覚醒がある可能性もあるから、とかなんとか……
そんなの、何百年も起きてないのに適当な言い訳をしないでほしい!
結局お国が怖いんでしょ!?
国の決まり国の決まり……って、もうウンザリ!
異例がないのなら学園長の権限で『極小魔力なら途中退学を認める』とかいう決まりを作ればいいじゃない!
学園の維持や生徒達の衣食住は、全部国から出てるって聞いた。
なら、1人でも少ないに越したことはないはずだ。
私みたいな無害な魔力持ちなんて、解放しちゃった方が国にとって絶対いいに決まってる!
そう思うけど……あのガチガチの堅物に抗議するのは、今回の事で時間の無駄だと痛感した。
「Fクラス、タチバナ・シエルさんですね。合計10冊でお間違いないですね?」
そんな図書委員の声掛けに、ハッと我に返った。
「あ……はい」
図書委員は慣れた様子で私のローブに付いてるバッジを指さす。
すると、バッジからポウッと小さな光が放たれ、その光は数秒もしない間に吸い込まれていく。
「貸出手続き完了しました。返却期限は2週間後になりますので期限はお守りください」
「はい」
そう返事をして、再び10冊を抱え上げると……
「うっ」
重っ……!!
今日の本は全部分厚いせいで、めちゃくちゃ重い。
しかも本がタワーみたいになってしまっていて、前が全然見えない。
もう少し小分けに借りたらよかった。
そう後悔し始めた時――
「わぁ、凄い量……。良かったら持つよ」
そんな台詞に振り返ると、図書館を背景に、とても綺麗な男性の姿が映った。
背はとても高く、なのに中性的な顔立ち。
動きのあるやわらかなアッシュブラウンの髪が目に入ると、前髪が優しくふわりと揺れた。
一目見ただけで、この人は女子達に騒がれるような存在の人なんだろうと、直感で分かった。
その瞬間、肩をグッと掴まれ振り返ると、顔を真っ赤にしたメイがドアップで映った。
「ちょっと!シエルってサオトメ様と知り合いなの!?」
手を添えて小声で聞かれる。
「サオトメ……?」
その名前には聞き覚えがある。
あ!そうだ!
女子の間でかなり有名な、あのサオトメ・ロレンツォさんね!
確か歳は私より1つ年上だったはず。
名家の一人息子で、8歳の時にこの学園から勝手に出ようとた事でも有名なのよね。
さらに、久しぶりに飛び級を達成するんじゃないかと噂されるほど、相当な魔力の持ち主。
なのに、試験当日に体調を崩すことが多く、繊細な心の持ち主でもあるらしい。
上級クラス棟と建物が違うせいで噂ばかり耳にしていたけど、実物を見るのはこれが初めてだ。
なるほど。
女子が騒ぐのも頷ける美貌だわ。
「余計なお世話だったかな」
申し訳なさそうな表情を浮かべるサオトメさんの尊顔に、思わずブンブンと顔を振って否定する。
そして、そんな綺麗な目で見られると、どうしても頬に熱を持ってしまう。
「い、いえ。でもこれくらい大丈夫ですので。ありがとうございます」
本が落ちないように気を付けながら小さく頭を下げて通り過ぎようとした、その時――
本のタワーにそっと手を添えられた。
驚いて目をやると、私に合わせて少し屈むサオトメさんの顔が間近に迫り、心臓が跳ねた。
「遠慮しないで、手伝わせてほしいな。女の子がこんなに重そうな物を抱えて歩くなんて、ほっとけないよ」
ひぇ~!!なんて優しいの!?
顔が良いだけじゃなく中身まで良いだなんて!!完璧すぎる!
「お気遣いありがとうございます。でも……」
断ろうとした私の口はメイの手に塞がれてしまう。
目をパチクリさせると、メイが耳元で囁く。
「いいじゃない!せっかくこんなに親切に言ってくれてるんだし。仲良くなれる絶好のチャンスよ!寮まで結構距離もあるんだし、持ってもらいなよ!」
確かに、ここから寮までは結構な距離がある。
正直、この量の本を持って帰ったら、明日は腕が上がらないだろう。
でも、話したこともない人にこんな重い本を持ってもらうなんて、かなり気が引ける。
それに……
こんなに綺麗な男子と一緒にいるなんて、すっごく落ち着かない!!(ここ最重要!!)。
「私の為と思ってOKしてよぉ。私、一度話してみたかったの」
でも、メイにお願いされると断れるものも断れない。
うーん……
まぁいいか。
そこまで言うのなら。どうせメイもいるし。
「すみません。じゃあお言葉に甘えて……何冊かお願い出来ますか?」
私の言葉にメイがガッツポーズをした、その時――
「Dクラス、マジマ・メイさん、Dクラス~マジマ・メイさん。至急講師室まで来てください」
そんな園内放送が響き渡った。
初めて小説家に初めてなろうに登録、投稿させて頂きました。
超新人で至らない所はありますが。「面白い!」「続き読みたいな!」と思ってもらえたら、ブックマークや5つ星評価をいただけると、とても嬉しいです(*´-`*)
モチベーションが、ぐんと上がります( *ˊᵕˋ*)
ぜひよろしくお願いします!