招かざる訪問者2
でも、ディオンが私を殺した犯人だと断定するには、いくつかおかしな点がある。
それは、私が前世の話をしたときのディオンの反応だ。
あの時、本当に初耳のような感じで、『そんなの聞いた事ねぇ』と言って、信じる様子も無かった。
それに……
今回、私を命がけで助けてくれた……
そんな事を放課後の講師棟の屋根の上で考えていると、目の端に何かが映り、反射的に目を向けた。
すると――すぐ横で腕を組んで立つ、髪の長いディオンが映った。
「えっ!ディ、ディオン!?」
突然の姿に驚き、心臓が大きく跳ねる。
「……目が、覚めたんだね」
良かった……
でも、それにしても、その髪型……
見れば見る程……
自分の心臓が嫌な音を立て始めるのが分かって、胸元を押さえた。
「いつからそこに?」
「ちょっと前から」
「えぇ!?」
全く気付かなかった。
「なのに、お前全然気付かねぇし」
「ちょっと、考えごとをしてて……」
「ふぅん?」
片眉を上げたディオンは、ダルそうに私の隣に座ってくるから心臓が跳ねた。
「ってか髪、真っ白だな」
私は、目が覚めた時から、まるでディオンの髪色みたいに銀に近い真っ白だ。
「うん。そうなの。なんかディオンとお揃いにしたみたいで困るよね」
私は自分の髪先を掴んで、困ったように笑った。
こんな髪色、学園には今のところ私とディオンしかいないし……
「別に」
てっきり否定的な言葉を言われると思ったのに、許容されてしまって少し驚く。
「そ……そっか。それより体は大丈夫なの?」
「別に。なんともねぇ。それより寝すぎてだりぃ」
ディオンは夕焼けに染まる空を見上げ、大きなあくびをしてからダルそうに首を右左に傾げた。
首を動かすたびに揺れる黒く長い髪を見て、私の中の直感さんがメガホンを持って『犯人はディオンだー!』と叫び始める。
「何日だ」
「えっ?」
「俺はどれくらい寝てたんだ?」
「えっと……」
私は手をパーにして指折り数える。
「5日……かな?」
「ふぅん。そりゃだりーわ。にしてもなんだったんだ?ドア前の警備員や女たちは。監視されてるみてぇでウザくて逃げて来た」
「あー……ディオンが寝てる間に、沢山の女子達がお見舞いに押し寄せたらしくて、だから……」
「ふぅん。くだらねーな。見舞いなんかで元気になるわけねぇだろ」
ピシャリと言われた言葉に、自分まで否定された気がして小さなショックを受ける。私もその女子達の中に居たから。
「気持ちの問題でしょ」
「要らねぇよ」
なんでそんな酷い事言うのよ、と思ったけど、ディオンが沢山の女子達に囲まれて喜んでいる姿を想像すると……それはそれで凄く複雑な気持ちになりそうな気がした。
「みんな、心配してるんだよ」
私の言葉に、口を歪めるディオン。
「……ディオン」
「ん?」
「何度も助けてくれてありがとう。約束……もう守ってくれないと思ってた」
私の言葉に目を大きくしたディオンは、「思い出した」と口にし、一瞬でイラついた顔に変わる。




