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俺は、お前が……16
頼む!正気に戻ってくれ……
そう願った時、魔力の放出量が減り始めたのが分かった。
再びその体勢のまま魔力を抑え込み始める。
でも、抑え込む度に、同量の魔力が俺から持っていかれる。
このままだと……俺の方が先にぶっ倒れるかもしんねぇ。あと少しなのに……
早く……
早く目を覚ませっ!!!!
そう願った次の瞬間――シエルの瞳孔が元に戻っていく様子が俺の目に映った。
シエルはパチパチっと瞬きし、驚いたように目を見開いて俺を見た。
やっと、目が合った。
アーモンドのようなでかい目を見て、心底良かったと思った。
「……馬鹿が……」
その思いが胸を満たした途端、全身の力が抜けて、俺はそのまま地面に倒れ込んだ。
自分の目の前には、黒く長い髪が映る。
それを見て、自分の魔力がほぼ尽きたことを知った。
「ディ……ディオン……?」
重りがついているかのように重くなった瞼に押されて目を閉じた俺の耳に、シエルの声が心地よく響いた。
次は『招かざる訪問者』の章になります。不穏な影が……




