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【大賞受賞作】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?~あなたがくれた幸せの呪い~  作者: 花澄そう


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246/283

俺は、お前が……15


ディオン目線――


ふと薄くまぶたを開けた。


かすむ視界に、不自然なほど攻撃を放ち続けるシエルが映った。



そのシエルの髪は何故か白い。



「シ……ル……?」

のどに焼けたような痛みが走り、かすれた声が出た。



その時、先ほど攻撃に当たってしまった事を思い出す。

あんな攻撃を受けたのに、まだ生きているって事は、もしかしてシエルが治癒魔法を……?



そう思ってヴァイスの姿を探すが、見当たらない。

魔力に意識を向けると、ここにはヴァイスは居ないように思えた。


俺が意識を失っている間に、一体何が起こったんだ。



「……エル……」


俺の声に全く反応しない。

どこかに攻撃し続けているその姿に、やっとひどい違和感を覚えた。



その正体を確かめようと、ガクガクと震える体をふるい立たせて立ち上がる。

全身焼けるような激痛が俺を襲う。



「おい」

シエルに声をかけ、その顔を覗き込んだ瞬間――


瞳孔が完全に開ききったままのシエルが、俺の目に映った。



あんなに枯渇こかつしていたシエルの魔力が、今はありえないほどに溢れている。

そして、その魔力は体の枠に収まりきらずに、垂れ流されるように放出され続けている。



その時、ある予感が頭をよぎる。


「まさか……」




魔力の覚醒……っ!?



どうして……?

いや、今は理由なんてどうでもいい!

一刻も早く抑え込むのが先だ。


このままだとシエルの体がもたないっ!



「シエル……ッ!」


肩を掴み、強く揺さぶりながら名前を呼んだ。

でも、なんの反応もない。

俺の声なんて届いていないようだ。



通常なら魔力暴走と同ように、俺の魔力で抑え込む所だが――この膨大な魔力を相手に、今の俺では抑え込むのは難しいだろう。

他に、正気に戻すという手もあるらしいが……


いや、難しいだなんて言ってられねぇ!

やるしかない!


すぐに垂れ流されていく魔力を壊さないように、慎重にみ取るようにして抑え込んでいく。


全身を襲う痛みで薄れそうな集中力を、なんとか保ちながら……




辺りでは、酷い雨に加えて、雷が鳴り始める。

こんな場所に留まっていては危険だという焦りも湧く。


その時、シエルの全身がガクガクと震え出した。

それは、シエルが危険な状態におちいっていることを意味していた。



魔力の覚醒をしたとき、誰にも抑えられなかった場合は、魔力を全放出して、死に至る。

俺が1歳の時も、たまたま近くにいた、数名の魔法自衛隊が駆け付けて抑え込んだらしい。



「くっ……」

抑え込もうとしても、魔力は先回りするようにあふれ出して来やがる。

このままじゃ、絶対間に合わない!


空にかざしているシエルの手からは、もう何も出ていない。

髪色も白から黒へと変わり始めている。



目の前に『死』が迫っている状況に、奥歯を噛みしめ、再びシエルの肩を激しく揺らした。


「おい!シエル!俺だ!聞こえねぇのかよ!!」


絶対、殺させない!!

絶対に……っ!!


「死ぬんじゃねぇよ……っ!!」



そう言ってシエルの口を塞いだ。

その瞬間、シエルの体がビクっと震えた。

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