俺は、お前が……13
慌てて視線を走らせると、球の進行方向で、手をかざして立つシエルが映った。
「……エルッ!」
何やってんだ!!
あんな魔力が枯渇した状態で、あんな攻撃を受け止めれるとでも思ってるのかよ!
俺は、即座に瞬間移動でシエルの前に移動し、攻撃を跳ね返す為に手をかざそうとした。
でも、間に合わない。
そう感じた俺は、とっさにシエルと自分にシールドを張ろうとする――その瞬間……
「がっ……!」
とてつもない衝撃と、猛烈な熱さが全身を襲い、俺はすぐに意識を失った。
シエル目線――
「ディオン!!」
あの攻撃がNIHON陣側に向かっていると分かって瞬間、すぐに体が動いた。
今の私では止められないと分かっていても、メイやアラン、ローレン達の顔が浮かぶと、どうしても何とかしたいと思った。
その一心で手をかざした時――ディオンが私を守るように、目の前に現れた。
「ディオン!!」
そして今、ディオンは私の前で黒く焦げて倒れている。
「なんで!?どうして……」
私は震える手をかざし、ありったけの魔力で治癒魔法をかけた。
「死なせないから!!ディオン……ッ!」
ずっと、雲行きが怪しかった空からは、ぽつぽつと雨が降り始めてくる。
その時、私たちにふわっと影が落ちた。
見上げるより先に、ディオンの横に汚れた白い靴が見えた。
そして、その足は無理やりうつ伏せのディオンを仰向けにした。
「う……」
「やっぱ生きてるんだな。残念だ」
顔を上げると、怪訝な顔をしたヴァイスという男が、私たちを見下ろしていた。
「何するの!!」
私はすぐに風を放ってヴァイスを引き離し、ディオンを庇うように前に立った。
「ふふ。そんなので守れるとでも思ってるのかい?僕ってなめられてるのかな?」
ヴァイスの体から光が溢れ出し、服や体に付いていた汚れが嘘のように消えていく。
「お願い!これ以上は止めて!あなた、ディオンの元友人なんでしょ!?なんでこんな酷い事出来るの!?」
「さっき、君も聞いたでしょ?カミヅキは僕のことを友人だなんて思ってなかったみたいだよ。それに、君も約束守ってくれないし……」
ヴァイスは冷めた目で私たちを見下ろし、口の端をニッと引き上げて続けた。
「なにより……こんなチャンス二度とないだろうからねぇ?」
チャンス……?
「ここでカミヅキを殺したら……、僕は世界で唯一の大魔法使いになれるんだよ?そうなれば、このつまらない人生も少しは変わるのかもしれないよね?それに……戦場に居る人達は敵国ならばいくら殺したって合法なんだよ。面白いよね」
ヴァイスは楽しげに笑みを浮かべながら、首を傾げた。
白い髪が、うねることなく肩を超えてさらりと流れていく。
「おもしろ……い……?」
「僕は、20年まえから、ずっとこの日を待っていたんだ。色々横から突いてもなかなか戦争が起こらないからさ、痺れが切れて学園に攻撃を落としたら、それが発端となってすぐに戦争に発展したよ。完全に計画通りだった」
「この戦争は……あなたが……起こしたの……?」




