俺は、お前が……11
遅れてから、気が遠くなりそうな傷みが一瞬で襲ってきて、そのせいで、せっかくここまでかけ続けていた解除魔法が消えてしまったのが分かった。
今まで感じたことのない痛みが、体の中で暴れている。
なのに魔法のせいでうめき声も出せない。
「なんて事を……っ!!」
「君が、言う事を聞かないからいけないんだよ?」
その言葉に、信じられないといった顔をするシエルが映る。
「次にまた君が抵抗したら、ディオンの体に同じのを2本くらい刺そうかな?」
「えっ……」
「そして次は4本。そして8本と倍々になっていくなんて面白いんじゃない?とどめさえ刺さなければ、自己治癒力で永遠の苦しみを与えれるんだよ。知ってた?ねぇ、それって絶対面白いと思わない?ふふっ」
シエルの目に、恐怖と絶望が映り込み、一瞬にして瞳が曇った。
蔓に囚われたシエルはガクっと俯きながら、かすれるような声で言った。
「……聞く……」
その言葉に、ヴァイスの口角が微かに引き上がる。
「ん?なんだい?言うならハッキリと言ってくれないと……」
「聞きます。……あなたのいう事をなんでも聞くわ」
怒りと悔しさに溢れる目でヴァイスを見上げた。
「だから……だから……ディオンに手を出さないで!!」
シエルの言葉に、ヴァイスは口角を下げて肩をすくめた。
「10点」
「へ?」
「謙虚さが全く感じられない」
ヴァイスは残念な目をシエルに向ける。
「それに……さっきまで僕を睨んでいた君の言葉なんて、すぐには信用できないかなぁ」
「そんな……」
「だから、僕を信用させてよ」
「えっ、信用させるって……どうやって」
「ショーの内容を変更しよう」
「えっ?」
「今から、僕に奉仕して?そしたらカミヅキには手を出さないよ」
その言葉にシエルは瞳を大きく見開いた。
「……っ」
「ほ……奉仕……?」
瞳の奥に戸惑いが見え、瞳が揺れた。
「はい。これ、解いてあげるね」
その言葉の後に、本当に蔓が外されていく。
「でも、少しでもおかしな事をしようとしたら、1秒後にはディオンの首はつながってないと思ってね」
ヴァイスはそんな言葉を楽しそうに言うと、蔓は元々あったと思われるベッドの柱に絡んでいった。
「よし、じゃあとりあえず、その邪魔な服は脱いでしまおうか」
「え……」
手を叩いてニコっと言われた言葉に、シエルは恐る恐るに俺を見た。
その瞬間、クシャっと顔が歪んで、泣きそうな顔に変わった。
ずっと横目で目を見開き見ていた兵士たちに、ヴァイスは言う。
「君たちはここから離れておいてくれるかな?僕の奥さんとなる人の恥ずかしい姿を、君たちには見せられないからね」
その言葉を聞いた兵士たちは、慌てた様子でこの場を去って行く。
「カミヅキは見とくといいよ。……この女が僕の物になる瞬間を」
ヴァイスは俺を見ると、笑みを深めた。
そんな中、シエルは震える手でローブのボタンに手を外し始める。
「偉いね。そうだよ。君が抵抗しなければ、カミヅキにはもう何もしない」
そう言うと、優しくシエルの頭を撫でた。
1秒でも早くこの固定魔法を解除したいのに、目が回りそうなほどの傷みと、目の前で繰り広げられる不愉快極まりない光景に、全く集中できない。
冷静になれ。よく考えろ。
他の方法を探すんだ。どうすれば……
「ふっ、くく……っ面白い。カミヅキのそんな必死な顔を見れるなんて」
勝ち誇った顔を向けられた俺の目に、ローブを脱ぎ落すシエルが映る。
そして今度はシャツに手を掛けた。
「それほどにこの女が大事か」
ボタンを外していくシエルの腰に、手を回して引き寄せたヴァイスは、シエルの長い髪をすくい、その先に唇を付けて続けた。
その様子に、全身の血が沸騰しそうなほどの怒りを感じる。
「大丈夫だよ。僕の城で、これからもたっぷりと可愛がってあげる」
そう言うと、シエルの顎をグイっと持ち上げた。




