俺は、お前が……10
「君を生かすも殺すも、全部僕の手の内にあるんだよ?それを分かって言ってるの?」
その時、首元の蔓が緩み、シエルは膝立ちをさせられたまま咳き込んだ。
その様子に、腸が煮えくり返るような怒りがこみ上げてきた。
でも、そんな自分が酷く滑稽に思えた。
なぜなら、自分も、過去に同じような事をシエルにしたからだ。
「僕は君を殺そうと思えばいつだって殺せる。だから僕への態度には十分に気を付けてね」
咳きこみ涙ぐむシエルは、その言葉には何も返さなかった。ただ、悔しそうな顔をしていた。
「返事は?」
ヴァイスの言葉に、シエルはただただ涙目のままヴァイスを睨み付けた。
ヴァイスはそんなシエルを見るなり大きなため息をつき、困ったような顔をして顎に指を添える。
「うーん……、このまま僕に屈するようになるまで続けたい所だけど……」
そして、ここから見える戦場を見下ろした。
「あまり時間もないし、それはまた今度にしようかな?どうせ君を連れ帰った後、いくらでも時間はあるんだし」
ヴァイスはそう言うと、気持ちを切り替えるようにパッと笑みを浮かべた。
「じゃあ、仕切り直して楽しいショーを始めようか」
ヴァイスがバッと手を横に広げると、そのタイミングで蔓が一斉に動き出した。
「やっ……何っ!?
蔓は、シエルの服の裾やスカートの下、襟ぐりから探るように中に入って行く。
「やっ……やだ……」
シエルは蔓から逃れるように体をよじり、頬を真っ赤に染めていく。
暴れているせいか、息が上がっている。
シエルは口元に来た蔓を、シエルが噛みちぎった。
その瞬間、蔓の動きがピタリと止まる。
「君……まだ抵抗するの?もしかして、僕が気に入った女を傷つけない主義だと知っててやってるのかい?」
眉を寄せたヴァイスの横に、一本の蔓が生えて来た。
「君がそんなんだったら、僕はこうするしかないよね?」
それに気付いた時には、その蔓は俺の方に向かって来ていて――
すぐに、
ドスっ
と鈍い音が聞こえた。
閉める事も開ける事も出来ない半開きのままの俺の口から、コポッと何か、温かい液体が大量に出た。
今、自分がどうなっているのか確かめる事も出来ない俺の目に、「ディオン!!!」と必死の形相で叫ぶ、捕らわれのシエルが映った。




