俺は、お前が……7
「あっ、国ってうちの国の事ね。それにNIHON側にもバレたって問題ないよ。だって、NIHON側の上層部にもたっぷりとお金は積んでるらしいからねっ。自国が負けても自分だけが大金を手に入れればいいなんて……やっぱ人間っておかしいよね。ふふっ」
賄賂か?相変わらずどの国も上のやる事は汚ねぇな。
「万が一、バレてはいけない人間にバレたとしても、証拠隠滅の方法なんて山のようにあるしねぇ……」
記憶操作か。
「お前……」
「世界の規約も、リヴァーヴァル帝国の前ではほぼ無効なんだよ」
「無効なんかじゃねぇよ。それは、リヴァーヴァル帝国が、ただ汚ねぇことして暗黙のルールを破ってるだけじゃねぇか」
と言うと、またニヤリと笑みを深めた。
きっと、リヴァーバル帝国がこいつを優遇して囲ってるんだろう。
そして暗黙のルールを破り続けて、ここまで勢力を伸ばして来たんだ。
連戦連勝なんてずっとおかしいとは思っていた。
でも、リヴァーバル帝国の名前すら聞きたくなかった俺は、長い間、何も知ろうとはしなかった。
国同士の事なんてどうでもいいし、勝手にしてくれと思っていたが、こんな裏があったなんて……
ん?
今さらだが、俺の目的は戦争を終わらせる事じゃない。
シエルを助ける事だ。
なら、さっさとシエルだけをここから逃がせばいいだけなんじゃないか?
仲間が死ねばシエルは悲しむだろうが、どちらにしてもリヴァーバル側にヴァイスがいて、さらには国の上層部までバックまでついているこの状況に、全員を生かして学園に戻るなんて無理な話だろう。
よし。
そうと決まれば、さっさとシエルを連れてこの戦場を後にするとするか。
シエルは戦死とみなされるだろうが、念のためしばらく身をひそめ、シエルの魔力も今の俺みたいに見えねぇように抑え込んでおけば完璧だろう。
行先は海外でもいいかもしれない。
2人で暮らす様子を想像すると、何故か心が躍り出しそうになった。
「暗黙は暗黙だからねー。それにしても変だね」
「何がだよ」
「なーんにも興味がなかったあのカミヅキが、魔力を隠してまでして戦場に現れるなんて」
奴は、俺の心を読むかのように、スッと目を細めて続けた。
「それって、もしかして……
……さっきの女のせい?」
そう言われてギクっとした。
「え?そうなんだ。ふふっ。珍しいね、カミヅキが顔に出すなんて。へぇ……カミヅキが女か……」
「女女煩ぇよ」
「ふーん……。あ!今いい事思いついた」
ヴァイスは鼻歌でも歌いだしそうな様子でポンと手をつくと、とんでもない事を口にした。
「じゃあ僕、戦争から身を引いてあげるよ」
「……は?」
なんだ?いきなりどうした。
「今からでもリヴァーバルに戻ってあげる。どうせ、こんなの暇つぶしだったし、別に殲滅してくれとまでは言われてないし」
奴は手の平を出してニコリと微笑んでこう続けた。
「だから、さっきカミヅキが守った女をお土産にちょうだいよ」
「……は?お前、何言って…………」
眉をしかめると、ついさっきまで遥向こうにいたはずのシエルが、奴の腕の中にいた。
その瞬間、俺の口から言葉が消えた。




