俺は、お前が……6
その言葉に、周りにいた兵士たちは口を大きく開け、魚のように口をパクパクさせていた。
100年ほど前に、1人の大魔法使いがこの世を去り、その後から、奴は――俺以外で唯一の大魔法使いとなっている。
「そんな面倒な事したかねぇよ」
「えー、なんで?絶対今よりは楽しくなると思うのにっ」
奴は、すねた顔をして眉をひそめた。
「そんな話はもういい。それより、大魔法使いは戦争に加担しねぇはずだろ?」
俺の言葉を聞いたヴァイスは、腹を抱えて笑い飛ばした。
「ははっ。今、それをカミヅキが言うのかい?とても滑稽だね」
涙を拭いながら言ってくるその言葉に、拳を握りしめた。
「まさか、そんな忠告をしにここまで来たんじゃないよね……ん?」
その時、ヴァイスは目を大きくした。
「あれ……?カミヅキから魔力が、ほとんど見えないね。
だからあの攻撃を跳ね返した魔法使いが、カミヅキだと気が付かなかったんだね。あの魔力の使い方からして、魔力制御ではないみたいだし……一体どういう仕掛けかな?」
こめかみに指を立てて考え込むようなポーズを取ったヴァイスは、ポンと手を叩いて目を輝かせた。
「そうか!地球の裏側にいる研究者だね?
確か最近、魔力が見えなくなる方法を発見した人がいるんだよね?その人に伝授してもらったのかな?」
俺はその質問に、だまりを決め込む。
「教えてくれないんだ。ほんと、つれないよねー。でも絶対そうだよねっ。それは戦場に来るため?往復だけでも丸1日はかかりそうな距離だよね……」
と話すと、空から俺に視線が戻ってきた。
「でもさっ、せっかくここに来る為にそこまでしたのなら……ちゃんと顔も変えないと。分かる人にはすぐバレるよ?」
「てめぇのせいだろが!」
黙っているつもりだったのに、つい叫んでしまう。
お前がタイミング悪く、あんな攻撃を向けて来たせいで!
「え?僕のせい?」
ヴァイスは目を大きくして自分を指差す。
「もういい、俺はお前と話をしに来たんじゃねぇんだよ」
こいつはシエルに危険をもたらした張本人。
今すぐにでも嬲り殺してやりたいところだが、残念ながら俺はこいつとはやり合えない。
もしこいつとやり合えば、シエルを含む、ここに居る全員が跡形も無く消え去るかもしれないから。
だから、こいつとやり合うという選択肢は――無い。
俺は、なんとか爆発しそうな殺意を抑え込んで口を開ける。
「お前は先に世界の暗黙のルールを破った。それをバラされたくねーなら、今すぐここから立ち去れ」
「別に僕はバレても大丈夫だよ」
ヴァイスは、そんな事を表情を変えずに返してくる。
「は?そんなわけ……」
「だって、僕がここにいるのは国公認だからね」
国、公認?




