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【大賞受賞作】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?~あなたがくれた幸せの呪い~  作者: 花澄そう


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235/283

俺は、お前が……4


…………


……



はー、マジで危なかった……



俺が来なかったら……

もし、あとほんの数秒でも遅かったら……


シエルはこの世に居なかっただろう。




シエルがこの世から居なくなる事を想像するだけで、自分が自分でなくなるような感覚におちいりそうになる。


そんな事になっていたら……俺は、シエルを助けられなかった自分を一生許せなかったと思う。


「これが、呪いじゃねぇんだもんな……。じゃあ、なんで俺はこんなにも……」


とりあえず、このくだらねぇことを終わらせてから考えるか。

そう思った俺は、空を飛びながら向かってくる攻撃をひたすらかわしつつ、静かに心を切り替えた。



何百年と生きてきたけど、戦争なんて参戦したことも見たこともねぇ。

だからよく分かんねーけど、手っ取り早く戦争を終わらせるには、勢力を大幅に削ればいいはずだ。


って事は、向こう側にもさっきみたいな攻撃をすりゃ、それで終わりだよな?


そう思って、うじゃうじゃと見える人混みに向かって手をかざすと

『お願い、人殺しになんてならないで……』

と言うシエルの声が浮かんで来て、頭を抱えた。



「くっ……またかよっ」


あー、なんで俺が毎回毎回シエルの言葉に邪魔されなきゃならないんだ!

誰のために動いてると思ってんだ!


「やっぱ……呪いだろ」

そう呟くと、敵陣の空部隊からも歩兵側からも、凄い数の攻撃が一斉に飛んで来る。


すぐに体の周りにシールドを張って、宙に浮いたまま、あぐらをかいてどうしたものかと頭を悩ます。


「うーん……」

ここから見た感じ、敵兵は数万はいそうだ。


全員を眠らすとかマヒさせるとか、そんな小賢こざかしい魔法をこれだけの人数にかけるなんてありえない。非効率過ぎる。



もっと簡単に効率よく制圧する方法は……


そう考えて腕を組んで首をかしげた時、

()()()!全く攻撃が効きません!」

という声が耳に入ってきた。



そうか……



これだ。




俺はポンと手を叩いてから目を閉じ、魔力に意識をかたむける。

すると、パパッと浮かび上がってくる大中小の魔力。


きっと、大きい魔力の持ち主だけでも動けなくしてやれば――終結する。



そう思った時、かなり奥にあるがけ上付近から、膨大な魔力を感じて目を見開いた。



「は?……この魔力……、まさか……」



嫌な予感が走って、すぐに真相を確かめるべく敵陣てきじんの間をぬって、がけの上に向かった。

でも、行く手をこばむかのように沢山の攻撃魔法が飛んでくる。


「うっざ」

シールドで守られているとは言っても、パチパチと飛んでくる魔法がまぶしいし、鬱陶うっとうしい以外の何者でもない。


俺は舌打ちをしてから、攻撃してくる側に向かって突風とっぷうを放った。

すると、すぐに歩兵はドミノ崩しのように倒れて行き、空兵も遠くに飛ばされていく。



「あ……、やり過ぎたか?手加減って難しいな」

ま、でもこの程度では死なねーだろ。と心の中で呟いたあと、再びがけの上を目指した。


まるで塔のように高いがけを登り詰め、トスッと頂上に片足を降ろす。


顔を上げると、戦場に似つかわしくない天蓋てんがい付きの王宮ベッドのような、神々しい家具が目に入って来た。

その家具の周りでは、数人の兵士が警戒した様子でこちらを見ている。


「いらっしゃい」

そんな声に王宮ベッドの中に目を向けようとすると――




周りにいた兵士からの総攻撃が飛んで来た。


でも、シールドを張っているお蔭で痛くもかゆくもない。


「何っ……私達の攻撃が効かないなんて!」


驚きを隠せない兵士に「うざい」と手の平を向けると、王宮ベッドの中から声が飛んできた。


「待って」


その声に、再び王宮ベッドの中に目を向ける。

すると、ゆったりと横たわる人物が目に映った。


その姿を瞳に捉えた瞬間、さっきの予感が正しかったんだと、ハッキリと悟った。



「もう攻撃させないから、僕の家来たちを殺さないでくれる?」

その人物の言葉に驚く兵士たち。



俺はシエルを泣かせ、殺そうとした目の前の人物に殺意を渦巻かせながら口を開けた。


「やっぱお前か。どうして戦場ここにいる?……ヴァイス」


王宮ベッドの中にいた人物はゆっくりと起き上がると、クスっと静かに笑みを浮かべた。

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