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【大賞受賞作】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?~あなたがくれた幸せの呪い~  作者: 花澄そう


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裂かれた大地20


「会話までは聞こえなさそうだったけど。念のため俺の名前は呼ぶな。バレたら後で面倒くせーから」


その言葉に静かにうなづくと、貼られたテープがめくれて地面に落ちた。

その瞬間を待っていた私は、すぐに口を開けた。


「ローレンやアランが大変なのっ。それに……他みんな、も……うっ……」

話しているうちに、感情がこみ上げてきて泣きじゃくってしまい、うまく言葉にならない。


「こ……このままじゃ死んじゃう……、もう、死……んじゃ……死んじゃって……かも……うっ……ど、どうし……っ……」

涙を拭いながら言葉をつなぐ私の頭に、温かい手がそっと乗せられた。


ディオンはそのまま、「落ち着け」と静かに言った。


泣き顔のままディオンを見上げると、そんな私を見つめたディオンは静かに眉をひそめた。

そして、そのまま周囲をぐるりと見回した。


「……大丈夫だ。まだみんな生きてる」

ディオンの言葉に、パッと心が晴れる。

「本当!?」




「ああ、だからさっさと回復してやれ。あんま放置すると手遅れになる奴もいる」

「え、うん……」


ディオンの言葉に、足元に居たアランに回復魔法をかけようとすると、ディオンは「あっちの女みてぇなやつが先だ」とローレンに向かってあごをさして続けた。


「えっ……」

「お前の足元にいる奴は魔力の覚醒者だろ?だから、今でも勝手に自己回復してる。ただ気を失ってるだけだ。それくらいじゃ死なねぇ」


「そ、そうなんだ……分かった!」

ディオンの言葉に、すぐにローレンの元に駆け寄って回復魔法をかけ始めると、ディオンは私の後ろにふわりと飛んで来る。


「そいつの回復が最低限終わったら、あいつと……あいつ」

ディオンは、倒れて動かない空兵と歩兵を指さした。



「あいつらが終わったら、全体に軽くでいいから回復魔法をかけたほうがいい。熊野郎を殺したくねぇんだったら、くれぐれもお前の魔力が尽きないように気を付けろよ」

「うん」


「あと、お前のネックレスに、自己回復を高める効果を備えてある」

「えっ……このネックレスに?」

なんでそんな効果が……


「そのネックレスから力を引き出すイメージをすれば、お前の回復力は今よりも早まるはずだ」

「そうなんだ。分かった」


すぐに、回復魔法をかけていない方の手でネックレスを握り、言われた通りにイメージしてみる。

すると、本当にさっきよりも魔力が回復していくのが体感で分かった。




私はディオンに、感謝の気持ちで顔を上げて見つめた。


「んだよ」


「……ありがとう……」

「本当、世話のかかる奴だ」

ディオンは頭を掻きながら背中を向けた。



「そろそろあっち側が体制を立て直しそうだな」

「えっ」

敵陣側を見ると、さっきまで爆風でめちゃくちゃになっていた体制が、少しずつ立て直されているのが見えた。


「片付けてくるか」

「え!?」

「お前はここに居とけ」

ディオンはふわっと浮かび上がり、私の返事を待たずに敵陣に向かって一目散に飛んで行った。


ディオンの背中を見送りながら、私の中で安堵あんどと不安が入り混じった。


そして、嫌な予感が走った――

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