裂かれた大地17
その瞬間、大きな風が起こる。
自分の髪がふわりと空に向かってなびく。
広範囲で風を巻き起こしたことで、地面に竜巻のような渦が出来上がった。
落下していた空部隊全員がその風に乗ったのを確認し、ゆっくりと地面に降ろす。
上空部隊達の元へ歩兵隊が駆け付ける様子を見た瞬間、安堵の気持ち溢れ出てきた。
すると、すぐに立っていられない程のひどい疲労感がどっと押し寄せ、私はそのまま膝をついた。
「もう、動けない、かも……」
自分の髪の色を見なくても分かる。
もう私に魔力なんてほとんど残ってないって。
そう思っていると、横からとんでもなく大きな魔力が近付いてくるのを感じた。
ギョッとして目をやると、先ほどまでとは比べ物にならない程の大きさの球が、敵陣から飛んで来ているのが見えた。
それを目にした瞬間、あの魔力の主がついに重い腰を上げたんだと思った。
今すぐにでも、この攻撃から逃げればいいのに、私は絶対逃げれないと思った。
だって、足元には倒れているローレンと、回復魔法をかけてくれている歩兵がいるのだから。
1人なら逃げれるはず。
でも3人なら……難しいだろう。
かといって、この2人を置いて逃げるなんて絶対に出来ない。
攻撃を跳ね返す?
魔力が余裕だった時は出来る可能性もあっただろう。
でも……今の魔力では……
どの選択肢も選べない私は、迫りくる光の球を見つめたまま固まってしまった。
何もできないまま光に飲み込まれてしまう。
そう思った時、私に大きな影が落ちた。
驚き目を見開いた時、アランらしき背中が見えた。
「アホか!」
そんな声が聞こえた瞬間、その姿が目の前から消えた。
そして、あの光の球も消えていた。
息を止めたまま恐る恐る首を振ると、空高くに飛んで行く光の球と、地面が削られたような大きな筋が映った。
その筋は、何か引きずられたような跡に見えて、目で辿っていくと――
倒れているアランにぶつかった。
「……ア……ラン……?」
その姿を見た瞬間から、心臓がバクバクと不整脈を打つ。




