裂かれた大地7
驚きを通り越し、まるでハンマーで殴られたかのようなショックが体中を駆け巡り、すぐに息が止まった。
逃げたいのに、身体が動かない。
その時、勢いよく顔の横に手を突かれ、私はベッドに挟み込まれてしまった。
「逃がさねぇよ」
主犯格の男が至近距離で私を見つめながら、不気味に笑みを深める。
「お前、本当に可愛い顔してんな」
恐怖のあまり叫び声も出せず、私はただ口を開けたまま固まってしまった。
主犯格は遠慮なしに私の膝の上に手を置くと、すっと太もも側に手を這わせ、スカートをまくり上げていく。
「俺だけ遅せぇ休憩でイラついてたけど、ラッキーだったぜ」
怖い……っ。
助けて!!誰か!!
そう心の中で悲鳴を上げると、今朝のように上手く息が出来なくなった。
「ここにはあの鬼畜講師も居ねぇし、ガードマンも空に戻った。もう誰も助けなんて来ねぇ」
息苦しさから喉に手を当てる。
「はぁ……はぁ……」
主犯格は私のローブのボタンを外した。
「さっき、あのガードマンと二人で居たみてぇだけど、ついに告られでもしたか?
いや……あいつはヘタレだから死ぬまでしねーか?昔から、牽制するしか脳のねぇクソみてーな奴だもんな。そんなんだから俺に先を越されるんだ……ん?どうしたんだ?」
「はぁ……はぁ……」
やっと私の異変に気付いた主犯格は、手を止めて不思議そうに私を覗き込んだ。
その時――
「あー、めっちゃ待たされたわー。鍋に入れるだけなんやから、はよしてほしいわー」
と大きな鍋を手にしたアランがこのテントに入って来た。
そして、アランが私たちを見た瞬間、驚きの表情を浮かべ、手にしていた鍋を落とした。
鍋は地面に落ち、カレーが勢いよくまき散らされた。
「な、……何しとんねん!!」
アランが凄い勢いで駆け寄って来て、そのままの勢いで主犯格を殴り飛ばした。
すぐに、ベッドに仰向けで倒れた主犯格の胸倉を掴んで半身を起こさせると、アランは怒りに震えた声で言った。
「言うたで!!次は絶対許さへんって!!」
アランが叫ぶと、突然主犯格の男が「ぐっ……」と苦し気な声を出して、自分の首を掴んだ。
「は……?なんや!?俺、まだなんも……」
異変を感じて目を大きくしたアランは、すぐに主犯格から手を離して一歩下がった。
すると主犯格は、ベッドの上で自分の首を掴んだまま、もがき始める。
何が起こっているのかと目を見張ると、そのままベッドから転げ落ちてしまった。
アランが主犯格を見下ろしながら呟いた。
「そういう事かいな……」




