裂かれた大地6
「僕が生き残れたら、その時は…………ずっと言えなかった事を君に伝えたい」
切実な思いが込められたローレンの瞳が、そっと私の手を取る。
その手の温かさが、ローレンの覚悟と不安を伝えてくるように感じた。
「僕は……僕はシエルちゃんを絶対に守る!だから、シエルちゃんは自分が生き残ることだけを考えてほしい!」
その言葉を聞いて、今日、何度もローレンが身を挺して私を助けてくれた事を思い出した。
たまたま偶然が重なったんだと思っていたけど……そうじゃなかったのかもしれない。
「ローレン……」
心の中で、思わず謝罪の言葉が浮かんだ。
けれど、それを飲み込んで、代わりにメイが教えてくれた言葉を口にした。
「何度も助けてくれてありがとう……。
でも……私を守るためにローレンが死んだら、絶対許さないです!だから、ローレンも絶対に生き残ってください!」
私の言葉にローレンは一瞬驚き、鼻先を少し赤くして優しく笑った。
「……分かった。ありがとう、シエルちゃん」
ローレンがテントを出て行き、ついに一人になった。
アランがすぐ戻ると言っていたけど、まだ帰ってこない。
広いテントの中に、自分のお腹の鳴る音が何度も響く。
食欲なんて全然ない。
けど、何かを食べないと体が持たないのは間違いない。
自分の為にも、みんなの為にもしっかり食べてないといけないよね。
「最後に食べたの、いつだっけ……」
フラつく体で、奥にある簡易ベッドに腰を下ろす。
「一人だし、少しだけ横になろう……」
そう呟きコテンと横になった。
すると、どっと押し寄せる酷い疲労感と脱力感。ベッドにすいついていくように体が重くなっていくような感覚。
コロンと入り口に背を向けて目を閉じて意識をすると、じわじわと体が少しずつ回復していくのを感じてきた。
これが治癒魔法……
やっぱり凄いな、と感心していると、突然ベッドが軋む音が耳に入った。
その音に誘われて、ゆっくり目を開けて振り返った。
すると――
「何?誘ってんのか?」
薄ら笑みを浮かべたあの主犯格の男が、私の瞳いっぱいに映った。
……えっ。




