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【大賞受賞作】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?~あなたがくれた幸せの呪い~  作者: 花澄そう


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裂かれた大地5


「マジマ・メイさん、時間だよ」

テントの中にいた人がそう言うと、「あ、ほんとだ」と言ってメイは私に手を振って軽快な足取りで出て行った。


テントを出た所に友人が居たようで、普通に話しながら戦地に向かうメイを見届ける。


本当に歩兵側は余裕なんだな。

そんなメイたちを守る為にも、私は頑張らないと……と思った時、再びテント入口のカーテンが開いた。


そこに入ってきたのは、私より先に休憩に入ったはずのローレンだった

「あ、シエルちゃん」


「ローレン。お疲れ様です」

「お疲れ様」

ローレンは微笑ほほえんで、少し目を細めた。


休憩に入る前は疲れ切った様子だったのに、今はそんな風には見えない。

髪もほぼ黒だったのが、今では黒い筋が入るメッシュのような状態になっている。さすがローレン、驚くべき回復力。



「やっと休憩に入ったんだね。シエルちゃんがうちのチームで最後だね」

「はい」

「ご飯、まだだよね?」

「はい」


「さっきまでそこにあったんだけど、ちょうどアランが食べきったから今取りに行ってくれてるよ。もう少ししたら戻ってくると思う」

ローレンは、テントの真ん中にあるお皿とスプーンが置かれたテーブルを指した。


「そうなんですね。それよりローレンの回復力は凄いですね」

「ん?」

「もうほとんど元の髪色じゃないですか」

私の言葉に、ローレンは眉を少し上げた。


「あれ?もしかして指揮官の話聞いてなかったの?」

「え?」

「この休憩所には、魔力回復が早くなる魔法が掛けられてるって。最初の頃に話していたでしょ?しかも体力回復効果もあるらしいよ」


最初の頃……といえば、私が両親を見た翌日だったよね。

あの時はショックで、何も頭に入っていなかった気がする。


そうか。

だから指揮官は、数ある中からこのテントを指定してきたんだ。


「隣、座っていいかな?」



「はい」

ローレンは、さっきまでメイが座っていた椅子いすに腰掛けた。



「ごめんね。こうなるって分かっていたのに、早く教えてあげれなくて」

「えっ!?そんなこと気にしないで下さい!口留めされていたんだから、仕方ないです。それに、講師の目もあったと思うので……」

「ううん。僕が臆病おくびょうなせいで……」

「前にも言いましたけど、ローレンは臆病じゃないです!」

私が思わず声を張り上げると、ローレンは一瞬驚いた顔をしてから、眉をひそめた。


「シエルちゃんの目にはどう映ってるか分からないけど、僕はね、肝心かんじんな時に全然ダメな男なんだよ。本当に……情けないほどに」

ローレンが話していると、テントをのぞくように自衛隊の隊員が入って来た。


「お前ら、ちゃんと時間見てるか?」

その言葉に、テント内にいた人たちは、各自時計を確認しながらダルそうに立ち上がっていく。


「サオトメも時間だろ?」

「はい。すぐ行きます」

ローレンが答えると、他の人たちはローレンを置いてゾロゾロとテントを出て行った。


気づけば、テント内には私とローレンの二人だけになっていた。



「行かなくて……大丈夫なんですか?」

そう言うと、小さな沈黙が流れた。

ローレンは伏し目がちにうつむき、そして静かにその沈黙を破った。


「シエルちゃん……」

せていたビー玉のような瞳が、ゆっくりと私に向けられる。

その目には、まるで何かを決意したかのような強い光が宿っているように見えた。


「もし……」

「……はい」

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