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【大賞受賞作】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?~あなたがくれた幸せの呪い~  作者: 花澄そう


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214/283

裂かれた大地3


目の前が明るくなって目がくらみそうだと感じた時、突然とつぜんその光は止んだ。


ゆっくり目を開けると、私たちは何も無い砂漠のような所に立っていた。




…………


……



到着して、すぐに戦争が始まった。


上空部隊のサポートである私たちのチームは、指示通り、上空で戦う魔法自衛隊を守るための防御壁を作った。


でも時々、敵の強力な魔法が壁を貫通し、負傷者ふしょうしゃが出る。


負傷者が出るたびに、私達が治癒魔法をかけた。

まれに、簡単には治癒出来ない程の重傷を負った者もいた。

その場合はすみやかに怪我けが人用テントに運んだ。



最初、太陽は横にあったのに、気づけば頭上に昇り、さらにいつの間にか日がかたむき始めていた。


私達チームは攻撃部隊ではない。

だから魔法自衛隊のじんが崩れない限り、基本誰も殺さないと、前もって聞かされていた。


でも、目の前でも、自分のはるか下でも傷ついて行く人たちを目にした。

そのたびに、胸が締め付けられるような苦しさを感じた。


彼らの傷みが伝わって、自分もいつか同じ運命を辿たどるのではという不安に押しつぶされそうにもなる。



どの国であっても、同じ人間なのに……

同じ人間同士がこうして生死をかけた戦いをしている事に、激しいいきどおりを覚えた。


でも、そんな感情にひたる暇もない程、私は味方である同じNIHON人を守る事に必死だった。



周囲の状況を見極め、時々壁を割って貫通かんつうしてくる敵の攻撃を避けながら、仲間と呼ばれる人間を守る。


少しでも多くの仲間を救いたいという一心で動いているこの行動は、相手国の人間を苦しめる行為で、考えば考えるほどに滑稽こっけいに思う。


もう何が正しいのか、何が間違っているのか分からない。


でも、恐怖と怒り、そして不安や不満に襲われながらも、自分をふるい立たせて前に進んだ。




現実問題、今の私はそうするしかなかったから……




そんな状況が半日ほど続いた頃、ついに初めての休憩時間が訪れた。

それは戦争が始まってから約12時間が経過した、夜のことだった。



指定された休憩用テントに入ると、周辺にただよっていたかすかな良い香りが一気に強くなった。

中を見渡すと、数名の生徒と魔法自衛隊員たちが、各々《おのおの》思い思いの姿勢で休んでいるのが見えた。



「お疲れ」



そんな声に目をやると、テント入口すぐ横の椅子に座るメイが見えて

「メイ!」

私はそう叫びながら、思わず飛びつくように抱きしめた。



良かった……生きてた!!


「怪我は無い!?大丈夫!?」

肩をつかんで引き離し、メイの足先から頭のてっぺんまで確認する。


私の質問に困ったように笑って首を傾げるメイは、不思議なほどに落ち着いた様子に見えた。



「大丈夫だよ。ほら、この通り。傷ひとつないよ」

メイは両手を広げて手のひらを見せ、肩をすくめた。


「良かった……ずっと心配してたんだよっ」

「私もだよ。出発前、シエルもひどい顔をしてたし」

「そうだよね。ご……」

ごめんと言いかけた口はすぐに手で塞いで、再び口を開けた。


「心配してくれてありがとう」

これは、メイが前に教えてくれた教訓だから。


「どういたしまして。それより座りなよ。疲れてるでしょ?」

と言ったメイは、サイドテーブルにある湯気の出ているカップを手にした。


「うん」

メイの隣の椅子に腰を下ろすと、どっと出て来る極度きょくどの疲れ。


それにしても、出発前はあんなに震えていたメイが、驚くほどに落ち着いていて、一体何があったのかと不思議に思う。



「メイは大丈夫なの?」と聞くと、メイはキョトンとした顔をこちらに向けた。


そんな様子に「その、精神的に……」と続けると、なぜか再び笑みが飛んで来た。

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