私、死にたくない……31
そして、気付けば眩しい朝日が私を照らしていた。
耳に、いつもと変わらない小鳥の囀りが入って来る。
でもなんだか、寒い……
手探りで布団を探すけど、どこにも見当たらない。
ゆっくりと目を開けると、視界に広がるのはいつもの自分の部屋。
でも、瞬時に何かを忘れているような気がして、仰向けのまま手の甲を瞼に当て、思い出そうとする。
「あれ……?なんだっけ……」
呟きながら記憶を辿ろうとしたその瞬間――
土色に変わった男子たちの姿と、狂気に満ちたディオンの目が脳裏に鮮やかに浮かび、バッと勢いよく起き上がった。
一瞬で心臓が嫌な音を立てる。
その時、ある疑問が浮き上がった。
あれ……待って!?
私、あの後、治癒はどこまでしたんだっけ?
そして、ここまでどうやって帰って来たの……?
いくら思い出そうとしても、治癒魔法をかけ始めた所から先の記憶が思い出せない。
まさか、あれは悪い夢だった、とか……
そうであって欲しいと願いながら視線を落とす。
すると、自分の膝の上に男子生徒用の制服である紺の縁取りのあるローブがかかっているのが目に入った。
私はどうやらこのローブを布団代わりにして寝ていたらしい。そら寒いわけだ。
でも……なんでここに男子用のローブが……?
「あぁー、全然思い出せな……」
頭を抱えてた次の瞬間――視界に入って来た鏡に映る自分の姿に、一瞬で心が崩れ落ちた。
それは、紛れもなく、あれは夢でない事を証明していたからだ。
鏡に映る自分の姿は、シャツが全開で、中のタンクトップが破れ、白いブラジャーが露わになっていた。
その瞬間から、昨日の出来事が次々と脳裏にフラッシュバックする。
現実を突きつけられ、思い出したくない光景が頭を占領する。
すぐに浅くなっていく呼吸に、喉に手を当てた。
「はぁ……はぁ……」
息が……苦しい……
次は「裂かれた大地」です(^^)/ついに動き出します。




