Gクラス-9歳-1
優しい陽射しが差し込む教室――
「初めて魔力というものを発見した人物は……。
魔力が高ければ高い程、寿命は延びます。記録の中にある一番長く生きた魔法使いは812歳で……今現在生存している中では……」
ここに来て、もう4年も経った。
講師が教科書を読み上げる声が耳に入ってくるけれど、私は来月に控えた5回目の進級試験のことで頭がいっぱいだった。
これまでの4回の試験結果は、2回合格、1回不合格、そして1回は不戦敗。
Fクラスまでの試験で滑る人はほとんどいないと言われているのに、私はすでに一度落ちている。
一度落ちてからは、試験が近づくたび、不安に押しつぶされそうになり、どうしても落ち着かない。
ちなみに不戦敗の理由は謹慎処分だ。
それは、脱園を試みたのがバレたせいだ。
学食のスプーンで地道に地下を掘ろうとしたこと(途中で硬い壁に阻まれた)や、壁をよじ登って逃げようとしたこと(すぐに警報が鳴って逃げ出した)は幸いバレずに済んだ。
でも、高熱がある時に頭がおかしくなったフリをして、唯一の出口だと判断した門から出ようとした時は、管理事務局員に見つかってしまった。
その結果、3か月の謹慎処分を受けてしまった。
もう、脱園できる方法なんて、瞬間移動くらいしか思い浮かばない。
でも、どの生徒も瞬間移動は使えないし、そもそもその方法さえ知らないようだ。
噂では、Sクラスに進むと瞬間移動の方法を教えられるって聞いたけど……一体、何が本当なんだろうか?
Sクラスの友人でも作れたら、もっと詳しい情報が手に入るのかな。また聞きだと駄目?
どうして私が卒業を目指すのではなく、こんなにも脱園しようと必死になっているのかというと、それは、私がこの学園で――
史上最弱の魔力の持ち主だと噂されているからだ。
講師はそのことを濁しているけど、態度や様子を見る限り、きっとある程度本当なんだろうと思う。
その噂が広まったせいで、最近では知らない人にまで馬鹿にされるようになってしまった。
正直、それが少し辛い……いや、結構辛い。
あーあ、やっぱ私の人生、前世も含めて上手くいかない。
なんでこんなに魔力が少ないの?魔法の実技なんて何をやっても上手く行かなし。
何か、人生ごと呪われてるんじゃないの?
「はぁ……」
愛してくれた両親に会いたいのに会えないし、復讐についても生まれた時から全く進歩なし。もう生まれ変わって9年も経ったのに。
もう、ため息しか出ない。
その時、窓の外から微かに騒がしい声が聞こえた。
目をやると、学園の門のところで講師や管理事務局の人達らしき姿が何人か立ち、何か揉めているようだった。
「ねぇ、なんかあそこでトラブってない?」
前の席のクラスメイトが振り返りながら話しかけてきた。
「ねっ。私も思ってた」
「あんな所でモメてるとか珍しいよね。しかも門が開いてるし」
その会話を聞きながら、再び門に目を向けると、管理事務局の人たちの影から中年の男女の姿が見えた。
その姿はとても小さいのに、瞬時に懐かしさを覚えた。
一瞬で高鳴る心臓。
呼吸のリズムが乱れる。
「お父さん、お母さん……?」
その瞬間、ガタッと椅子を鳴らして席を勢いよく立ち上がり、椅子が倒れた。
「タチバナさん……?どうされたんですか?」
私は、講師が今の状況を理解するより先に、教室を飛び出した。
風を切るように階段を駆け降り、上靴のまま校舎から飛び出して門に向かって全力疾走した。
そして見えて来たのは――
管理事務局員数名と、私の両親の姿。
やっぱり、見間違いじゃなかった……
お父さんとお母さんだ!!
「パパ!ママ!!」
私の叫び声に反応して、両親が振り返る。
目を丸くした二人が、懐かしい声で私の名を呼ぶ。
「シエル!!」
その声に、胸の奥から溢れ出すものを抑えきれない。
走りながら、ジワリと涙が滲む。
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