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【大賞受賞作】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?~あなたがくれた幸せの呪い~  作者: 花澄そう


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209/283

私、死にたくない……29

なまりのように重い体をなんとか動かそうと、なんとか仰向けから横向きになった瞬間、何もない空間にスッとディオンが現れた。


「ディ……」


驚いて名前を呼ぼうとした瞬間、目に入って来たディオンの表情に息が止まった。


何故なら、ディオンの表情にはひどい殺意が宿やどっていて、冷酷極まりない目をしていたからだ。


ディオンにまとわりついている氷のような空気が、私の肌にまで突き刺さった。


「が……ぐ……」

男たちのうなり声がずっと部屋に響いている。


この冷たい目をしたディオンと、またたく間に土色になっていく男たちの姿。


直感でわかる――これはディオンの仕業だ、と。



このままだとディオンが殺人犯になってしまう、という恐ろしい考えが頭をよぎる。


「こ……しちゃ……だめ……」


あの主犯格にかけられた魔法のせいか、まだ声が上手く出せないし、起き上がることさえできない。

ディオンを止めたいのに、近づくことすらできない。


ディオンは、男たちが苦しげに大きなうなり声を上げる様子を、無表情のまま見下し見ている。


「……ン……」


何度もディオンの名前を呼んでも、私の弱々しい声は男たちの苦痛の声にかき消され、ディオンには届かない。


「……オ……ン……」

のどに手を当て、絞り出すように声を振り絞る。


「殺さ……いで……」

やっと私の声が届いたのか、ディオンは怒りに翻弄ほんろうされた瞳のまま、こちらを見下ろした。


「…………お前……こいつらが何しようとしてたか、分かってて言ってんのか?」

おぞましい程の狂気にあふれたディオンの目に、全身に寒気が走った。




「わ……かってる……」

私の言葉を聞いた途端、ディオンの目がカッと見開かれた。


「分かってねぇだろ!!」

そして、私の足元でうずくまっていた主犯格を長いあしで勢いよく蹴り上げ、机に吹き飛ばした。


ガン!とぶつかる音が耳に飛び込んでくる。


「うっ……」

主犯格は苦そうに顔をゆがめる様子に、上手く上がらない手をディオンに伸ばす。


「……めて……っ」

「るせぇ」

「……やめ……て……よ……」

うるせぇって言ってんだろ!!」

ディオンは振り返りもせず、背中越しに叫んだ。


冷たい空気が部屋を包み込む。



私の視線の先には、力なく崩れ落ちた主犯格が横たわっていた。

頭部からは血がだらりと垂れ、床に赤い染みを広げている。


「ディ……オン、……もう……止め……て。……お願……!」



このままじゃ、ディオンが殺人を犯してしまうかもしれない。

講師の資格を失い、あの恐ろしい塔に入れられるかもしれない。


全て、私のせいで……



そんな事を考えていると、心が痛み、自然と涙があふれて来た。


「うっ……お願い……」


涙声で懇願する私の声は震えていたけれど、ディオンの背中に届いてほしいと必死に祈る。


すると――ディオンの動きがピタリと止まった。


「なんでだよ……」

ディオンはゆっくりと振り返ると、苦しげな顔を浮かべた。

「なんでお前は、いつも……っ!!」


その顔を見た途端、せきを切ったように涙が溢れてくる。


「だって……ディオンが……うっ……」

「泣くんじゃねぇよ!!なんで泣くんだよ!!こんな奴の為に!!」


ディオンはそう叫ぶと、勢いよく主犯格に手をかざした。


その瞬間、視覚に映ったのは、ディオンの体の周りでうずを巻き、次第に手のひらに集中していく魔力だった。


「こんな奴らなんて、今すぐ死ねばいい」


鋭く刺さるその声に、私は思わず息をんでから大きく口を開けた。


「や………………やめて――――――!!!!」

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