私、死にたくない……27
…………
……
「だ、大丈夫だよな」
「ああ。ちゃんと魔法もかかってるみたいだし、数時間は絶対目を覚まさないはずだ」
そんな男性の声が……聞こえる。
「サオトメも今度はちゃんと撒いたな?」
「ああ。大丈夫だ」
「あいつのせいで、前回は失敗に終わったからな。マジでタチバナ専用のガードマンかっての」
という台詞の後に笑いが起きる。
タチバナ専用の、ガードマン……?
そんな話が気になるけど、今はそれどころじゃない。
なぜかというと、私の瞼はまるで接着剤でくっついているかのようにピタッと閉じたまま、開けようとしてもびくともしないからだ。
それだけじゃない。指先すら動かせないし声も出せない。
一体、私の体に何が起こってるの……!?
「一応、念のため、起きても自発的に動けない魔法もかけておいたから、もし起きたとしても目も開けれないと思う」
「天才だな」
今の、私の話!?
なんでそんな魔法を……と思った時、頬を触れられるような感覚が走った。
でも、今の状況を確認する事は出来ない。
「……本当に可愛いな。タチバナさん……」
すぐ近くでそんな声が聞こえたと思うと、今度は唇を触れてくる感覚が走って、気持ち悪さに鳥肌が立つ感じがした。
「本当にいいのかな……こんな事して」
「お前、さっきから煩せぇな。俺が計画してる時、お前もやるって言っただろうが。振られた腹いせによ」
「言わないでよ」
振られた腹いせ……って事は、私に告白してきた人達の仕業?
というか、やるって……何?
まさか、私、戦場で戦う前に……振ったせいで殺されちゃうの!?
血の気が引くような恐ろしい想像が頭を過る。
どうにかかけられた魔法を解除できないかと、手に魔力を集めようとした。
でも、何度やっても、なぜか魔力が集まらない。
いつもならすぐに感じるはずの魔力が、今はまったく反応しない。
訳がわからないまま、不安と恐怖がどんどん膨らんでいく。
「どうせこいつも俺らも明日には死ぬかもしれないんだ。こんな事でもしねぇとやってられねぇよ!なんで俺たちが戦場に行かされねぇといけねぇんだよ!!」
「そ……そうだよね。みんな、ここに来たくて来たわけじゃないのに……こんなの、おかしいよ」
「勝手に連れて来られて、勝手に人生終わらされるかもしんねぇんだ!そんな人生なら、最後くらいはやりたいだけやってやる!」
そんな言葉が聞こえた後、足を割られる感覚が走った。
「別に俺はお前らと違って、こいつの事が好きとかじゃねぇけど……」
次は前髪を上げられるような感覚が、自分の頭皮に伝わる。
「こいつがこの学園で断トツで可愛いからな」
耳元でそんな低い声が聞こえたと思うと、耳元から首筋、そしてシャツの際まで指が滑った感覚が伝わった。
「それにしても綺麗な肌してるよな。強いて言えば、もう少し胸が大きいといいんだけど」
そんな会話に、先ほどまでとはまた違った恐怖心を抱き始める。
すると、ブチブチっと服のボタンがちぎられるような音が耳元で響いた。
集まらない魔力。
見えないという恐怖。
私の中で、酷い焦りが募る。
早くどうにかしないと駄目なのに、どうにもならない。
その無力感が、さらに恐怖を加速させていく。
「僕は、これくらいが好きだけどね」
「お前の好みなんて聞いてねぇよ」
直後、胸元に風が通るような涼しさを感じた。
「なんだ、このネックレス」
「ほんとだね。。……珍しいデザインだね」
「なんか高そう」
そのセリフに、自分の胸元が大きく開かれていると知る。
「ねぇ、もう触っていい?」
「ああ。でも……処女を貰うのは俺だからな」
その言葉を聞いて、先ほどから漠然としていた不安な予感が、確信に変わった。
そして、一気に絶望が支配した。




