私、死にたくない……24
メイが好きと知りながらも、2人で過ごした時間は数えきれない。
本当だったらメイの恋に協力するべきなのに、キスまでしてしまった……
私はメイには何を言われても、何をされても文句が言えない。完全なる裏切りだ。
そんな思いで頭を深く下げた私の耳に、メイの笑い声が飛び込んで来た。
驚いて顔を上げると、「大丈夫だよ」と、予想外に笑顔を見せるメイが居て頭の上にハテナマークを浮かべた。
「実は、もう好きじゃないの」
「え?」
「結構前に、偶然シエルとカミヅキ講師が屋上で一緒に居てる所を発見して……」
えぇ!?いつの間に!
「2人の様子を見てたら、なんか入る隙もなくて全然無理だなって思ったの。そしたらなんか冷めちゃった」
「え!?」
「前々から、なーんか怪しいと思っていたのよね。魔法会の時も2人で抜けるし」
そう話すメイは、どこか嘘を言ってるように見えた。
「……それって、本当なの?」
メイは困ったように微笑んでから、小さく肩をすくめた。
「あ、バレた?私も人の事が言えないよね。反省。
でもね、確かに……完全に忘れたなんて言ったら嘘になるけど、それで大半諦めれたんだから、私にとって本当に特別なんかじゃなかったんだよ。これは本当」
今度のメイの言葉は、嘘をついているようには見えなかった。
「特別な人って、代わりなんか無いと思うの。諦めるなんて、どうやってもできないような人。私は、これからそんな人を見つけるつもりだから、シエルも協力してよね!」
「メイ……」
拭い去れないメイへの罪悪感が、胸の奥から溢れ出してくる。
「だからさ、私の事なんて気にせず頑張って!私のことで遠慮なんかしてたら、容赦しないからね!」
メイの声はとても優しくて、そのせいで目じりに溜まっていた涙がスッと頬を伝って流れた。
「……うん……」
私って、いつからこんなに泣き虫になったんだろう?
「ごめん……」
「なんで謝るのよ。私たち、親友でしょ」
その言葉に、胸がじわっと嬉しさで満たされていくのを感じた。
メイに呆れられても、怒られても、関係がさらに悪化しても仕方ないと思っていた。
それほどの話だったのに、まさかメイに許されて、さらには応援されるなんて……数時間前の私は想像出来ただろか。
次にディオンに会ったら……
今のこの気持ちを伝えたい。
戦地で私に何があっても、後悔しないように――
その日、私は何年ぶりかに規則を破ってメイの部屋でお泊りをした。
消灯後は声をひそめながら、お互いに昔の話や、記憶の底に沈んでいた出来事を掘り返して笑い合った。
戦争が迫っているという現実を忘れたかのように、私たちは将来の夢や、これからやりたいことを夜が明けるまで語り合った。
翌日――
私は、心に大きな決意を抱いて、ディオンが今日も会いに来てくれるのを待っていた。




