私、死にたくない……23
私はメイに、前世やネックレスの話をした。
次第に、怒りを含んだメイの表情が和らいでいくのが見て取れた。
「……という事なの」
唖然としたような顔をしていたメイは、暫く沈黙した後に静かに呟いた。
「…………そう、なんだ……」
ベッドに腰掛け、困惑の表情を浮かべるメイは、前に立つ私から視線を落として深いため息をついた。
「そんな凄い事情があったって全然知らなかった……。なのに私、勝手に落ち込んで、一方的責めて……」
悲し気に眉が下がったメイの顔を見て、私も釣られて下がってしまう。
「信じてくれるの?」
「当たり前じゃない」
優しい目でそう言われて、すぐにでも泣きそうになる。
「ごめんね……シエル」
「ううん……。謝るのは私の方だよ。メイにずっと辛い思いをさせてて、ごめん……」
目じりに溜まってきた涙を制服の袖で拭う。
「ずっと……私が頼りないから、私が信用できないから隠してるんだと思ってた……」
「え?頼りないなんて、絶対無いよ!メイの事は凄く頼りにしてるし!」
「……そうなの?」
「そうだよ!
試験に受からない原因を必死になって一緒に考えてくれたり、私がミジンコ魔力だって馬鹿にされた時も何度も盾になってくれたり、他にもあげたらキリがない位にメイには色々してもらってる!そんなの、頼りありすぎだよ!」
メイは、私の言葉を聞いて涙を浮かばせて笑った。
「シエルは、それ以上に私に色々してくれているけどね」
「え?そう……だっけ?」
思い返そうとしても、あまり思い出せない。
「そうよ。私の悪口を言った人をコテンパンにしたり……」
「ああ……」
確かにそんな事があったような、とメイの言葉に思い出される古い記憶。
「とにかく……メイを信用できないなんて、絶対ないよ!
ネックレスの事を言えなかったのは、闇魔法の事を話してしまうとメイの負担になるんじゃないかって思ったからなの」
メイは、涙を拭いながら何度も頷いた。
「前世の事は……ただ言いづらかったの……。ずっと、皆を……メイを騙してたみたいで……。言えない期間が長くなるほど、言いづらくなって……」
「そうだよね……。なのに言ってくれてありがとう。すっごく嬉しかった」
と言うと、メイは私を抱きしめた。
「メイ……」
「ねぇ、シエル」
「なに?」
「……これを知ってるのはカミヅキ講師と私だけ?」
なんでここでディオンの名前が……
「えっ、うん」
「そっか……」
と呟くと、メイは嬉しそうに微笑んだ。
「その……ディオンの事なんだけど……。これだけは本当に隠してたとかじゃないの」
私の言葉に、不思議そうな顔が向く。
「あっ……でも、知らず知らずのうちに隠してたのかな……」
自問自答をしながら、自然と眉が寄る。
「なんの話?」
「本当は、メイにディオンの事を聞かれた時、好意の自覚はあったの。もしかして好きなのかも、位には思ってたと思う。でも、そんな感情、絶対に復讐の邪魔になるって分かってたから、あの時は認められなかったの……」
「そっか。ずっと……卒業したらしたい事があるって言ってたのは、さっき話してくれた復讐の事だったんだね」
と聞かれて、私は静かに頷いた。
「でも、一緒に居れば居る程に、もう認めざるを得ないくらいに気持ちが溢れて来て……」
「うん」
「だから……今は、ちゃんとこの気持ちを認めてるの」
そう言って胸元に自分の手を置いた。
メイになんて思われるのか、不安になる。
せっかく、話も出来るようになったのに、また元に戻ってしまうかもしれない。
でも、もう隠し事はしたくないって思ったの。
だから……
「私は……ディオンが好き。メイが好きだって知っていたのに、気持ちを止めれなくて本当に……ごめん……」




