国立日本魔法学園入学3
「ふぁ~」
目の前の男性は、横になったまま口に手も当てず、大きなあくびをした。
せ、せっかくの美形が……
その見た目が完璧すぎるだけに、思わず残念な気持ちで見つめてしまう。
そんな私に気付いたのか、彼はダルそうにこちらをチラリと見て、口悪く言い放った。
「なんだよ。クソガキ、勝手に入ってくんな」
その言葉遣いに、今度はショックで一瞬石のようになってしまう。
「クッ、クソガキじゃないわ!」
口を膨らませて返すと、
「はいはい。ガキは馬鹿だから皆そう言うんだよ。ふぁ~」
と、また大きなあくびをした。
私の腹の中で、底知れぬ怒りがじわじわと湧き上がってくる。
「馬っ……!?私、馬鹿なんかじゃない!なんなのあんた!初対面なのに、流石に酷過ぎるでしょ!!謝って!」
なんてムカつくやつ!
一瞬でも見とれていた自分を今すぐ呪いたいくらいだわ!
「るせぇな。眠ぃからさっさと出てけ」
男性が指を私に指を向けてクルっと円を描いたと思うと、私の足は勝手に回れ右をした。
「えっ?あれ?」
自分の足なのに、まるで他人の足にすり替わったみたいに言うことを聞かない。
「な、なにこれ!?どうなってるの!?あ、足が勝手に……」
驚いている間に、足が勝手に動き出し、気づけば廊下に出てしまっていた。
直後、背中側にあった扉が勢いよく閉まり、小さな風が吹いた。
扉の閉まる大きな音にビクッと反応し、小さく飛び上がった私はようやく気付いた。
「あ……あれ?」
さっきまで思うように動かせなかった体が、今は嘘みたいに自由に動かせるようになっているという事に。
念のため、手のひらをグーにしてみる。
「動く……」
まさか、これも魔法?
魔法ってこんな事まで出来るの?
それって凄すぎない?
もし私が魔法をマスターしたら、すぐにこの学園から脱出できるんじゃないの?




