私、死にたくない……19
「あっ……」
そっと唇が離れた瞬間、足の力が抜けた私を、ディオンは腰に回した手で支えた。
「馬鹿」
そう言われて、理由も分からず恥ずかしくなる。
「こんなの……返したうちに入らない……」
「は?」
「私、お金はないけど魔力は結構あるみたいだし、何か手伝いとか……」
なんとか息を整えながら話していると、ディオンは首を傾げて話を遮って来た。
「そんなの要らねぇよ。俺が《《してぇと思った事》》で返してもらった。それじゃいけねぇのかよ」
してぇと思った事……
その言葉が何度か頭の中でエコーする。
「えっ……」
そして少し遅れて私の顔にボっと火がつく。
いやいや、何かの勘違いに決まってる!
どちらにしても、キスなんかじゃ恩を返す値にならない。
しかも、数日後には、私は死んでしまっているかもしれない。
そんな私はどうしたらこれほどの恩を返せるんだろうか。
考え込んでいると、突然、人差し指に痛みが走った。
「い、痛っ!!」
すぐに視界いっぱいに、私の指を噛んでいるディオンの姿が映った。その状況に、思わず目が点になる。
「な、何して……っ」
第二関節にくっきりと付いてしまった歯形に、驚きが隠せない。
「またうだうだと考えてただろ?俺がいいって言ってんのに」
だからって、普通噛む!?
「そんなに足んねぇか?」
そう聞かれて、一瞬躊躇ってから頷いた。
「全然足りない……」
そもそも、こういうので返せるものじゃないし。
「ふぅん……」
ディオンは私の頭上に肘をつき、私を見下ろした。
その行動に目を見張ると、私の足と足の間を割るように、ディオンの足が入って来た。
ハッとして視線だけ下げると、自分のスカートがディオンの足でまくり上がって行く様子が映って心臓が跳ねた。
「……っ!」
驚いている間に、スカートはどんどん上がって行って、白い太ももが露わになっていく。
そんな行動に、全く理解が出来ない。
「ディ、ディオ……んっ」
突然耳元を触られ、体がビクっと震えた。
耳たぶ、耳の中、周りを撫でるように触られて、なぜかそれだけで息が上がる。
「っふ……」
早く止めないと駄目なのに、上手く抵抗出来ずに私はされるがまま。
「お前、前から思ってたけど、俺を煽るの上手いよな」
私の顔の横に顔を埋め、耳元で囁く。
そのまま耳たぶを甘く噛まれて、また震えてしまう。
「……んっ」
ディオンの指先が耳元から首筋へと滑らかに動き、鎖骨を撫でるように伝う。
その動きに緊張が走った瞬間、ポンチョのボタンがパチンと外れる音がした。
「……っ!」




