私、死にたくない……11
長年企んでいた『瞬間移動で脱園大作戦』は、実行されることなく終了のお知らせが流れて来た。
というか、実行前にその情報を知れて良かったと心底思った。
「じゃあ私、どうしたらいいの……?」
前世、あんなに何度も死にたいと思っていたのに、今は心底死にたくない。
友人たちも失いたくないし、傷ついて欲しくない。
このまま両親にも会わずに死ぬなんてのも嫌だし、もっとディオン達と笑っていたい。
メイとも仲直りだってしたい。
復讐も、まだ始まってもいない。
こんなに沢山のやりたい事があるのに、もう、何一つ叶えれる気がしない。
「まだ……死にたくないよ……」
涙が浮かんでくるから、下唇をグッと噛む。
「おい、なに死ぬ気でいてんだよ」
「だって……」
震える声で言うと、ディオンは長い指で再び私の頬を伝う涙をそっと拭った。
「俺が、どうにかしてやる」
「えっ……」
「だから、そんな顔すんな」
「どうにかって…………どうするの?」
そんなの出来ないでしょ?
「分からねぇ」
期待してしまった分、その言葉に一気に気持ちが落ち込んで、肩までガクッと力が抜けた。
「でも、何かいい方法がないか探しておく。さすがにすぐに出発ってわけじゃねぇと思うし」
何かって……
なんか安心出来そうで出来ないこの気持ちに、喜んでいいのかも分からない。
でも、そう言ってくれるのは、凄く嬉しい。
ラブの方に手を伸ばすと、指先に何かが触れた。
視線を向けると、今朝読み返していた両親の手紙がそこにあった。
「……こんな事になるんだったら、誕生日祝いの日、両親に会っておけばよかったな……」
あれはあれで凄く楽しくていい思い出だけど……
「なんだ、それ」と聞いて来るディオンは、私が手にした手紙を指さす。
「これは、両親からの手紙で……」
「両親からの……手紙……?」
何故かキョトンとした顔で手紙を見てくるディオン。
ディオンは幼い頃に両親を自分の魔力で亡くしてしまったから、手紙のやり取りなんて経験がないのだろう。
だから、手紙というもの自体が珍しいのかもしれない。
と思っていると、突然私の手から手紙を奪い取って来た。
「えっ、ちょっ……」
「そうか、手紙か!」
「……へ?」
首を大きく傾げると、ディオンはベッドから降りた。
そして私の手を取り、立ち上がらそうとしてくる。
「な、なに?」
「親に会いてぇんだろ」
「う、うん……」
いきなり、何?
「行くぞ、親に会いに」
「えぇっ!?」




