国立日本魔法学園入学2
…………
……
「つ、疲れた……」
慣れない環境だからか、大した授業じゃなかったのに酷い疲労感だ。
「早く自分の部屋に戻りたい……」
そう思うのに……
「いくら歩いても女子寮に着かないんですけどーー!?ここ何処ぉーー!!」
廊下で叫んでみるも、返って来るのはやまびこのような自分の声だけ。
IとHクラス以外は今授業中らしいけど、それにしても人が居なさすぎる。
手にしてる「にゅうがくのてびき」を開き、園内マップに目をやる。
でも、自分がどこにいるのかサッパリ分からない。(前世も方向音痴な人)
「こんな事ならトイレなんて我慢して、授業が終わった時にみんなと一緒に帰ればよかった」
って、そんなの今さら後悔しても遅い。
肩を落としながら、何度も地図をグルグルと回してみる。
「この渡り廊下、さっき渡ったよね?じゃあ、やっぱりこっちの渡り廊下かな?マップでいうと、ちょうどこの辺りだよね?」
ぶつぶつと独り言を言いながら、渡り廊下があるはずの場所にあったドアを開けた。
すると――
まるで社長室のような雰囲気の部屋が目に飛び込んで来た。
大きく長いソファ、その手前に立派な机。
そして壁一面には、フラスコやビーカー、薬のようなものが入った瓶がずらりと並ぶ棚が置かれている。
なんの部屋だろう。理科室のような、社長室のような……
探検するような気持ちで部屋に足を踏み入れると――
「誰だ」
誰も居ないはずのこの部屋に、野太い声が響いた。
「え?」
驚いて慌てて辺りを見回すが、どこにも人影は見当たらない。
そう思った次の瞬間、ソファの上に光の粒がふわりと集まり始めた。
何もなかった場所に、横たわる人の形が浮かび上がり、その輪郭が徐々にはっきりしていく。
そして――白銀に輝く髪の男性が現れた。
その男性は、周囲に淡い光をまといながらゆっくりとこちらに目を向ける。
目が合った瞬間、突然現れたことへの驚きよりも、その美しさに心を奪われた。
この世のものとは思えないほどの美しさに、神々しささえ感じてしまう。
「……っ」
非の打ち所がない程に整った顔立ちに、釘付けにならずにはいられない。
サファイヤのように澄んだ碧い瞳。
眩しいほどの白銀の前髪がさらりと揺れ、切れ長の目が私をじっと見つめている。
その視線だけで心臓が早鐘を打ち、思わず胸元に手を置いた。
「あ…………あの、私……」
やっと本来の目的を思い出した私は、、熱くなった頬に手を添えて道を聞こうとしたその時――