表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【大賞受賞作】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?~あなたがくれた幸せの呪い~  作者: 花澄そう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

186/283

私、死にたくない……6


ディオンの事だったの!?



「学園生活っていうと……そうだな……、()()()()()()()されたり、塔に入れられたりしたっけな……」

やっぱり!


「なんで塔になんかに……」

「魔法で同級生に怪我ケガさせただけだ」


だけって……

この学園では、生徒や講師に故意に魔法で怪我をさせると、塔に入れられる。


時々、10代くらいのヤンチャな男子生徒がそういう理由で塔送りになることがある。

そして戻ってきた時には、同世代の男子から英雄えいゆうみたいに扱われることもあるけど……ディオンの性格からして、そういうのとは違う気がする。


何があったのか、どうして怪我をさせたのか……

それも気になるけど、もっと気になるのは『殺人鬼呼ばわり』の方だ。



「殺人鬼と呼ばれていたのって、まさか……その暴走のせい?」

もしそうだとすると、あまりにも酷い。



「……ああ、そうだ」

ディオンの言葉に、一瞬で胸が苦しくなった。


「なんで?それって、ディオンの意志なんて無いじゃん!」

「ねぇな」


「じゃあ、なんで……なんでそんな事言うのよ!絶対おかしいよ!」



「『意志』が有るとか無いとかじゃねぇんだろ。そんな所気にするのなんてお前位だ。人間の大半は結果しか見ない」


「そんなわけ……」

否定的な言葉を口にした瞬間、前世で結果しか見ない社会を思い出して、口をつぐんだ。

悔しさとやるせなさが胸の中に押し寄せてくる。


「まぁ、俺を怖がる奴、おびえる奴、面白半分で近付いてくる奴はれなくろくでも無い奴で……『楽しい』なんてのは無縁な学園生活だった。

でも、そんな学園生活も7歳で終わったから、本当に一瞬だったけどな」

と投げやりに言った言葉に、うわさで聞いた歴代最短で卒業したのがディオンだと知って、再び驚きが隠せなくなった。



「卒業してからはどうしてたっけな……」

ディオンは腕を組んでうなり始める。


「もう……いいよ。十分聞いたから」

と言って止めようとすると、「これで十分なわけねぇだろ」と返されて、私は眉をひそめた。


「そう……だけど……」

でも、こんな辛い過去を言わせたいわけじゃなかった……


「なら大人しく聞いとけ。こんな話、今じゃなきゃしねぇかもしんねぇし」

やっぱり気まぐれだったんだ。


「……ああ、そうだ。10歳で大魔法使いという肩書が付いたんだっけな」

10歳で大魔法使い!?

思い出したように話すディオンの話に、驚きが隠せない。


「ずっと殺人鬼と罵られ、近寄る人間すらいなかったんだが、10歳になって得た肩書のせいで驚く程に人が寄って来るようになった。

優しい言葉、俺に向ける笑顔、貢物みつぎものの数々……。始めこそ驚き戸惑ったが、俺は次第にそんな奴らに心を開いていった。

……その裏に、どんなたくらみがあるのかなんて想像すらせずに……。それほどに、俺は本当に幼かった。

……でも、そんな裏の思惑が日を追うごとに見え透いてきて、俺はついには人間不信になりかけた。そんな時、俺はある奴とつるみ始めたんだ」



ディオンにこんな話をさせていいのと迷いながらも、結局耳をかたむけてしまう自分が、なんだか情けなく感じた。


「そいつは珍しい奴で、大魔法使いである俺になんの要求もしてこなかった。

小国の王子で、何人もいる王子の中で王座おうざ争いをしている最中だっていうのに。

そいつは話術にたけけた奴で、一緒に居る時間は悪くなかった。だから、自然とそいつの部屋に入り浸るようになった。初めて友達と呼べるような奴が出来たと思った」


珍しく沢山たくさん話すディオンは、自分のことをどこか他人事のように、淡々《たんたん》と語っていた。



「だが、交流を持ってから何年か経った頃『大事な友人として国民に紹介したい』と言いだして来たんだ。まぁいいかと思って、気軽に返事をしたんだが……」


突然とつぜんディオンの言葉が途切れ、部屋に沈黙ちんもくが流れた。


無表情だったディオンの顔に、じわりと怒りがにじみ出てくる。



「……あれが、間違いだった」

「な……何があったの……?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ