私、死にたくない……5
それは、本心と反対の言葉だった。
「好き……じゃない、に決まってるじゃん……」
どうして、こう言ってしまったんだろう――
口にした瞬間、後悔のようなものが押し寄せた。
「んだよ。違うのかよ」
どこか残念そうなディオンの言葉に、不思議な気持ちで顔を向けた。
「好きでもねぇ奴のプライベートなんて興味ねぇだろ。変な奴だな」
「う、うるさいわね」
「どんな人生を歩んできたのか……だっけ?」
「え、うん……」
「ああ、あと、大魔法使いを隠す理由とか言ってたな」
と呟くディオンは、ダルそうに後頭部で手を組んで天井を見上げた。
「……別に、聞いて面白れぇ話なんてねぇけどな。最低限働いて、残りは自由に暮らしてるだけだ。大魔法使いって肩書を隠してんのは、ただ国や世界の問題に巻き込まれたくねぇからだ」
その言葉に、キョトンとした顔を向けてしまう。
だって、あまり言いたがらなかった自分の事を、今なら教えてくれるように感じたからだ。
「もしかして、ディオンのこと聞いていいの?」
「聞きてぇんだろ?」
そう言われ、私は少し戸惑いながらも遠慮がちに頷いた。
「何から聞きてぇんだ」
あんなに嫌そうだったのに、急にどうして?
やっぱりディオンはよく分からない。
ただの気まぐれ?
どちらにしても、こんなチャンスは今度いつ巡って来るのか分からない。
ディオンのことを――もっと知りたい。
「うーん、学園に入る前も知りたいし、学園に居た頃も、卒業した後も気になるし……」
小さい頃のディオンはどんなんだったんだろう?
魔力もトップクラスだっただろうし、ガキ大将的な存在だったのかも……
「学園に入る前は分からねぇ」
「えっ?」
「記憶がねぇから」
その言葉に驚いてディオンを見ると、少し眉を下げた横顔が目に入った。
その瞬間、この話はタブーだったんじゃないかと思った。
「俺が学園に入れられたのは1歳になった頃らしいし」
「1歳……っ!?」
一瞬聞き間違いかと思った。
でも、すぐにこれは普通なのかもしれないと思い直した。
だって、ディオンは大魔法使いなんだから。
大魔法使いになる人達は、魔力の覚醒者か、一般的に魔法を感知できる3~5歳以外の年齢で魔力が溢れる者。そのどちらかだから。
「1歳になった頃、俺は魔力の暴走を起こして、そのせいで1つの町が吹っ飛んだらしい。それを、少し大きくなってから聞かされた」
その瞬間、入園時に聞かされた言葉が頭に浮かんだ。
『最悪の場合は、バーン!って町ひとつが吹き飛ぶこともある。そうなったら物心つく前に大量殺人鬼扱いで酷い人生を送る羽目になるらしいぜ』
まさか、あれって……




