私、死にたくない……3
…………
……
「……おい!聞こえてんだろ!?開けろ!」
ガラスが割れるような音が何度も響く。
「うぜぇ、何重にしてんだよ、この壁……」
だけど、そんな状況に目をやる気も起きない。
私は学園長の話を聞いた後、すぐに自分の部屋まで飛んできた。
そして、追ってきたディオンを避けるため、部屋中に防御壁を何重にも張り巡らせた。
「……あっち行って……」
ベッドの上で膝を抱え、顔を埋める。
ラブは、そんな私の横で目を潤ませて私に寄り添っている。
「はっ、またそうやって引きこもるのかよ。今度はキノコじゃなくて苔でも育てる気か?」
その言葉に、思わず顔を上げてディオンを睨みつけた。
こんな非常事態だというのに、鼻で笑うなんて!
ディオンは大魔法使いで無敵だから、もうすぐ自分が死ぬかもしれないなんて、こんな不安や恐怖、分からないんだ!
「そんなん作るわけないじゃん!私の気持ちなんて分からないクセに!あっち行ってよ!」
「またそれかよ。お前の気持ちが分からないのなんて当たり前だろ?俺はお前じゃねぇんだから」
その言葉が、私を余計にイラつかせた。
「俺は戦争に出た事もねぇし、命じられた事もない。……だからって、それが俺がお前といちゃ悪い理由にはなんねぇだろ」
なんだか、一緒に居たいと思ってくれている感じに聞こえて、少し嬉しくなった。
「あと、前から思ってたんだけど、お前はいつも俺の事を勝手に決め付けるよな。お前は俺の何を知ってんだよ」
でも、今度はその言葉に胸がズキリと痛んだ。
まるで、私との間に線引きされたみたいに感じたから。
「……そうだよ……。私はディオンの事なんて何も知らないっ!」
本当は、もっと知りたいのに……
「なんで大魔法使いという事を隠してるのかも、どんな人生を歩んできたのかも、普段は何してるのかも……知りたいのに、何も教えてくれないのはディオンじゃん!」
こんなに一緒に居るのに、ディオンの私生活は未だにオブラートに包まれたまま。
私だって人の事なんて言える状況じゃない。でも、やっぱり凄く淋しい!
「……まさか、お前……」
目を大きくしたディオンは、次にとんでもない事を口にした。
「俺の事好きなのか?」
その言葉に、体がカチンと固まった。
「……へ?」
すぐにボッと火を付けられたかのように、一瞬で全身が熱くなる。
「え、え、えっ?ど、ど、どうしてそうな……」
今、絶対そんな感じの話なんてしてなかったでしょ!?
「だって、お前、そんなに俺の事が知りてぇんだろ?」
それだけで!?
「……あれ?開いた」
私の集中力が切れたのか、それともディオンが何かしたのか分からない。
けれど、ディオンの前の魔法壁だけ、楕円形の穴がぽっかりと開いていた。




