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国立日本魔法学園入学1


翌朝――


この部屋に管理事務局の人が来て、あずき色のふち取りがある黒いローブと、あずき色のスカート、白シャツなどの制服一式を置いていった。



さっそく着替えて、部屋の細長い姿見の前に立ってみる。

斜めにずれていたリボンを整え、軽くポージングしてみる。


「可愛い」


5年経っても、まだ自分が生まれ変わった事が信じられない。


クリっとした大きな目、小さな鼻、愛らしいぷるんとした唇。

そして、この意外と可愛いこの制服。

「結構いいかも」

……なんて。


お父さんとお母さんの事を思うと、一瞬浮かれてしまった自分が嫌になり目を伏せる。


丸眼鏡の学園長が両親に連絡しておくって言っていたけど……

「……今頃、どうしてるのかな」


部屋中に漂う、お味噌汁の優しい香り。

口に運べば、体の奥まで温かさが沁み渡る、あの美味しい味……

次はいつ、あのお味噌汁を飲めるんだろう。



やっぱり、両親の言う『悪い人』は学園の人たちの事だよね。


出生届を出さずにあの部屋に閉じ込めて……

そこまでして私を手放したくなかった?

だって、卒業まで最短10年だもんね。


溺愛できあいしてくるあの両親の事だから考えられなくもない。

愛していたからこそ、離れたくなかった……?


じゃあ、よく言われていた『長生きして』とは、なんだったんだろう。


この学園に入ったら死ぬの?

でも……昨日見た生徒の顔は、死と隣り合わせにあるようには見えなかった。


「うーん……全然分からない」



…………


……


クリフオジサンに連れられて、割り当てられたクラスの教室前に立つと、ドア越しに子供たちの賑やかな声が聞こえてきた。


「ほら、入って」

ドアを開けたクリフオジサンにトンと背中を押され、一歩前に足を踏み出す。

目の前に広がったのは、私と同じくらいの年の小さな子供たちがたくさんいる光景だった。


「あなたが昨日入園したシエルちゃんね」

保母さんみたいに優しく微笑む中年の女性が、教卓のような所から私の方へ歩み寄ってきた。



「はい」

「私はこのクラスの講師よ。よろしくね」

「はい……よろしくお願いします」

そう言ってペコっと頭を下げる。


「あらあら。お利口さんね。でもちょっと待ってね。みんなに紹介する前に、ちょっと暑いから窓開けるわね」

講師は額の汗をぬぐうと、窓側に向けたステッキをスライドした。

すると、閉まっていた窓が次々と開いていき、心地のよい風が頬や髪の間に通り抜けた。


「うーん、いい風ね。よし!じゃあこっちに来て」

講師は私の手を優しく握り、教卓まで誘導してくれた。


低い教卓の前に立つと、講師が笑顔で話し始める。

「はーい!みんな聞いてください!今日は、新しいお友達を紹介するわよ~!」

その声に、おもちゃやパズルで遊んでいた子供たちが一斉に私の方を見た。


「昨日入園したタチバナ・シエルちゃんです。みんな仲良くしてくださいねぇ~」


講師がそう話ながら黒板にサッと手をかざすと、『タチバナ・シエル』と言う文字が浮かび上がってきた。そんな光景に、思わず目を見開いてしまう。


「タ……タチバナ・シエル、5歳です。よろしくお願いします」


「あら~、挨拶あいさつもちゃんと出来て、本当に偉いわね」

中身はいい大人なのに挨拶ごときで拍手されて、なんとも複雑な気持ちで頬を染めてしまう。



「ふえぇ~ん!」

突然聞こえてきた泣き声に目を向けると、水たまりの中で涙を流している3、4歳くらいの子供がいた。


「あら~。またおもらししちゃったの?」

教室の後ろからその子の元に駆け付ける大人の姿。

ふと教室の後ろに目をやると、授業参観のように大人が数名並んでいた。


一瞬、なんだろうと思ったけど、すぐに思い出した。

これが、クリフオジサンが言っていた『世話役』の人たちなんだろう。

駆け付けた大人の様子を見て、そう理解した。


椅子も豆椅子や地べたに座る子供たちばかりで、この光景はまるで幼稚園か保育園みたいだ。


「はーい。そろそろ授業を始めるわよ~席に座って」

講師は口元に手を添えて優しく声をかけると、ふと私に顔を向けた。


「シエルちゃん。席は決まってないから、好きな所に座ってね」

「はい」

そう言われて一番近くの椅子に座ると、ピューっと椅子から笛の音が鳴って、なんだか恥ずかしくなって俯いた。




「みんなには既に説明していますが、新しいお友達の為にも、久しぶりにおさらいしましょうね~」

「はーい!」


元気よく答える子供もいれば、うつむいたまま死んだような目をしている子供や、「ままぁ~」と泣く子もいた。


ここにいる幼児たちは、きっとみんな両親と無理やり引き離された子供たちばかりなんだろう。

それまで当たり前のように一緒に暮らしていたはずなのに――私と同じように……


そう思うと、胸の奥から湧き上がってくる同情心を抑えられなかった。




「この学園は入って来る時期が皆さんバラバラです。だから入園式というのはありません。

そしてこのクラスは、1番最初のクラスの『Iアイクラス』です。5歳になってから毎年12月に進級試験というのを受け、合格したら1月から1つ上のクラスに行きます。

I、H、G……A、Sクラスと上り詰めたあと、最後の試験に合格すると……どうなりますか?覚えてる人、いたら答えてくださいねぇ~」


すると隣の豆椅子に座る子が手を上げ、「そつぎょぉ~です!」と言った。


講師はニコっと笑って手を合わせる。

「そうですね。メイちゃん、よく覚えていましたね」


隣の席に座るメイという同い年くらいの子供が、「へへっ」と笑いかけてきた。


何か返さないと。そう思いながら、ぎこちなく笑顔を作ってみる。



それにしても、この子も、さっき泣いてた子も、みーんな魔法が使えるんだよね?


なんだか、すっごく不思議だし、まだ信じれない。

そんな、魔法のある世界に生まれ変わっただなんて、全然実感が持てないよ。



ん?……あれ?

待って!?

世界自体が違う!?


って事は……

私、ここからなんとかして出れたとしても、復讐出来ないんじゃないの……っ!?

初めて小説家に初めてなろうに登録、投稿させて頂きました。


超新人で至らない所はありますが。「面白い!」「続き読みたいな!」と思ってもらえたら、ブックマークや5つ星評価をいただけると、とても嬉しいです(*´-`*)

モチベーションが、ぐんと上がります( *ˊᵕˋ*)

ぜひよろしくお願いします!

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