手紙の謎15
…………
……
「なんで時空間の本ばっか読み漁ってんだ?」
ディオンの顔が、本の向こうから突然覗き込んできた。
少し横に傾いているその顔に、私はビクッと驚く。
「ひゃ、ひゃぁ!!い、いつの間に!」
ディオンに後光が見える気がするのは、ディオンの事を『好き』だと自覚したせいじゃなくて、きっとステンドグラスから差し込む光のせいだろう。
私が本棚の間にある一人掛けの椅子で集中して本を読んでいる間に、ディオンはいつの間にか近づいていたらしい。
彼が屈んで私の読んでいる本の表紙を覗き込んでいる姿にハッとして、私は慌てて本を背後に隠した。
「い、いつからそこに居たの!?」
「煩ぇな。今防音魔法使ってねぇんだから、いきなり叫ぶなよ」
「ご、ごめん……」
実は私は今、魔書資料室に来ている。
この前のランチの後、『まだ魔書資料室に入りてぇか?』と聞かれた。
なんでそんな質問をするんだろうと思って話を聞くと、もうすぐ学園長や講師、警備員までもが不在がちになる日があると教えてくれた。
なんと、その日なら、また魔書資料室に入れてやれると言うのだ。
私がした返事は言うまでもない。
そして、その日が今日というわけ。
「ってか、なんか知りたい事でもあんのか?ずっと同じような本ばっか読んでるみてぇだし」
と聞かれて胸がギクッと音を立てる。
「べ、別に興味あるから読んでるだけだよ」
「ふぅん?」
疑うような目が向いて、思わず目を逸らす。
本当は、ディオンに聞けば早い話なんだろうと思ってる。
なんたって、知識も魔力も経験値もトップクラスじゃないとなれない、特別講師なんだから。
でも教えてもらうとなると、必然的に、前世の事を打ち明けることになってしまうんだろう。
そうなると、ディオンに、復讐心に燃える私を知られてしまう。
好きだと自覚した今、そんな私をディオンに知られたくない。
「お前……なんか怪しいな」
「えっ!?」
驚いている間に、ディオンの手がスッと伸びてきて、私の顎を指でグイっと持ち上げた。
「ちょっ……」
「何こそこそと隠してんだ?」
ディオンの顔が一気に近づいてきて、私はその距離に耐えられなくなり、すぐに頬が熱くなるのを感じた。
「か、か、隠してなんて……」
「じゃあなんで目が泳いでんだよ」
ディオンが急接近してくるからでしょ!?
頭が混乱した私は、顎にあった手を掴んで思わず叫んだ。
「ディ、ディオンっ!!」
「おい馬鹿っ!だから叫ぶなって……」
鬱陶しそうに言いながら、ディオンはなぜか自分のロングコートで私を包み込むように抱きしめてきた。
「えっ!?ちょっと……んぐっ!」
そして突然、手で口を塞がれた。
更に混乱する私の目に、真剣な顔のディオンが映る。
その瞬間、違和感を感じた。
なぜならディオンは、なぜか私ではなく入口の方を鋭く見据えていたからだ。
そんな様子を見た瞬間、嫌な予感が過る。
ディオンが耳元で静かに囁く。
「絶対に喋るなよ」
その言葉にゴクリと唾を飲み、私は静かに頷いた。
次の瞬間、ギーっとドアの開く音が聞こえて、体が石のように固まった。
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