手紙の謎14
十何年も身に着けていたのに、たった半年ほど見なかっただけで、その姿が酷く懐かしく感じた。
というか、ここはいつも貸し切りの屋上だけど、禁忌である闇魔法がかかっていた物を、こんな場所に堂々と置くなんて、危険なんじゃないの!?
そう思った私は、すぐに辺りを警戒しながら、石に触れないように手で覆い隠した。
「別に、もう触って大丈夫だ」
あたふたしている間に言われた言葉に、私は目を丸くする。
「え?」
「ずっと縛り付けられていた魂も全部解放したし、闇魔力も消しといた」
「……えっ…………?えぇ――!?」
魂を解放して闇魔法を消した!?
し、信じられない!
そんなこと出来るの!?
もしそれが本当なんだったら、ディオンは一体何者なの!?
驚きで目が飛び出そうになる。
「だから、それはもうただのネックレスだ。堂々と付けてりゃいい」
ディオンの言葉に私は石をじっと見つめ、恐る恐る手に取って石の感覚を確かめる。
指先が覚えている。
このフォルムも、手触りも……
ふと太陽にかざした。
すると、深い海のような美しい碧色が浮かび上がり、心が洗われるような気がした。
「あっ……っ!」
その時に気が付いた。
ヒビが綺麗サッパリ無くなっているという事に。
ディオンに目を戻すと、感謝の気持ちが溢れてくる。
ディオンは分かりにくいところが多い。
突然意味不明に機嫌が悪くなるし、手も早いし、謎だらけだ。
でも、こんな風にさりげない優しさが出来る人だ。
興味なんて無い私の話を、文句を言わずに聞いてくれる人。
「……ディオン」
「ん?」
ダルそうな目がこちらを向く。
「ありがとう」
「本当に世話のかかる奴だ」
そして、意外と照れ屋な人だという事も知ってる。
私は、そんなディオンがどうしようもない程に――――好き。




