手紙の謎13
その後、ローレンはチャイムが鳴るまで、私の話を優しく聞いてくれていた。
ローレンは、振ることが辛いという私の気持ちに共感してくれたのか、今にも泣きそうな顔をして話を聞いてくれていた。
…………
……
結局、何度も頑張ったけど、メイとは仲直りできなかった。
そしてローレンが学食で言いかけた言葉も聞けないまま、訓練場は元通りになり、雨の季節が過ぎ、夏が訪れ、気がつけば秋になっていた――
そんなある日の屋上。
私は、冷たい風が頬を撫でるのを感じながら、玉子サンド片手に秋の澄んだ空を見上げていた。
遠くには赤や黄色に染まった木々が見える。あれほど暑かった夏が過ぎ、肌寒さを感じる季節に変わってきている。
季節は巡っても状況が変わらないままの私。
でも、心の中で1つだけ進展した事がある。
それは――
「今日の授業は何するの?」
「ん?」
一緒に玉子サンドを食べているディオンの顔が向く。
ディオンが授業のある日は、こうして2人でランチをするのが、もう毎週の恒例になっている。
絶品の玉子サンドを食べ終えた私は、次にディオンが出してくれた色とりどりのマカロンを、喜びながら1つを手に取った。
いつもみたいに、ふとメイの顔が浮かんでくる。
そして感じる罪悪感。
でも、私は――それでもディオンと居たいと思ってしまう。
2人で居る、この時間が好きだから。
こんなの自分勝手で、許されないこと。
そこまで分かっていても止められない。
その理由は……もう分かっている。
「もしかして、また実技?」
「あーそうだな」
「ここんところ、ずっと実技ばっかだよね」
口を膨らませると、机の上に居るラブは私を見てからマネするように口を膨らませた。
「実技を伸ばせって言われてんだよ。学園長に」
「やっぱりそうなんだ」
「やっぱり、ってなんだ?」
「他の授業もほとんど実技ばっかりなんだもん。おかしい位に!」
「他の授業も?」
驚かれて、ディオンは何も知らないんだと思った。
こんなに実技ばかりが続いているのに。
本当に学園の事に興味ないよね。
休みから復帰したときに、訓練場に出来た穴について聞いた。
その時も、全部綺麗に元通りになった後だったからか『なんだそれ』の一言で終わったし。普通もっと気にならない?
気になるポイントが分からなさすぎる。
「うん、そうだよ。夏前くらいからだんだん実技が増えて行って、今ではどの授業も大半は実技になってるのよ。
別に実技が嫌いなわけじゃないけど、こうも授業内容が偏ってると嫌になってくるというか……」
「ふぅん……」
「ここ1か月はずっと火の玉当てに、風を起こし。水が出せる人は氷を出す練習をさせられたり……あとは、治癒魔法が得意な人ばそればっかりさせられてるよ。変じゃない?」
私は指折り数えながら言った。
「その話が本当なら……、確かに変だな」
「でしょ!?」
「学園長に聞いといてやる」
「ありがとう」
「あ、そうだ」
突然ディオンが指を差したと思うと、何もない空間から現れたのは、懐かしい碧い石がついたネックレス。
「え!?これ……っ!」
コトッと机の上に置かれ、戸惑いを隠せない。




