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手紙の謎12


「うん」

そう言った時、ローレンの顔がハッと変わり、目を伏せた。


「ごめん、また今度話すよ」


ローレンは急に世間話に話題を変えると、不自然な様子で話を始めた。

私は不思議に思ってローレンの視線を追った。


すると、食堂の入り口から、Aクラスの講師が入ってくるのが見えた。



…………


……



「タチバナさん、少し、いいですか?」

頬を染める20歳くらいの好青年に話しかけられる。バッチの色はCクラス。


「はい」

何だろうと思いながら彼について行くと、人気のない裏庭に着いた。



「お、俺、ずっとタチバナさんが気になっていて……その……」

ん?これはまさか……


「好きなんです!付き合ってください!」

えぇ!?ま、また!?



実は、私は上級クラス棟に来てからというもの、告白を受けることが一気に増えた。


これで何人目だろう。

これで12人……いや、13人?もう分からない。



最近思っていたけど、まさかこれがモテ期というやつなんだろうか?

告白された事はあったけど、こんなに頻繁にされる事なんて一度もなかった。


もしかして、髪が金色だから?

それとも学園最弱じゃなくなったから?



「ごめんなさい……。私、誰とも付き合う気はなくて……」

そう言うと、彼は残念そうな顔でうつむいた。


「知ってます」

「えっ」

「じゃあ、付き合うのが難しいのなら……せめて友達から始めさせてもらえないですか?」


勇気を振り絞るように、彼の手がこちらに伸びてくる。

指先がかすかに震えていて、新たな罪悪感が生まれる。


「……ごめんなさい……」






裏庭からの帰り道「シエルちゃん!」と言う声が聞こえて、顔を上げた。

必死な形相ぎょうそうのローレンが駆け寄ってくる。


「ローレン……」

これで何回目だろう。告白された帰り道にローレンと偶然会うのは。



でも、今回はその偶然に少し違和感を覚える。

なぜなら、この先には本当に裏庭しかないし、お昼休憩も終わる時間だからだ。



「どうしてここに……」

「あっ!それは……」

ローレンが口ごもる様子に、やっぱり何かあるんじゃないかと疑ってしまう。

そう思いながらジッとローレンを見ると、彼は少し焦った様子で、心配そうに言った。


「シエルちゃんが連れられて行かれる様子が見えたから、何かあったのかと思って……」


ああ、そっか。

ローレンは、ただ心配して駆け付けてくれただけなんだ。

一瞬でも疑ってしまって、ごめんなさい。


「そうだったんですね。ありがとうございます。でも、何もありませんでしたよ」

「本当に?何もされてない?」

そう言って私の姿を確認するローレン。


「はい」

そんなローレンに笑顔を返す。


ローレンは意外と心配性なのかな?


「そう……良かった」

ホッと胸をなでおろすローレンは、続けて「でも、男子とこんな人気ひとけのない所に来たら駄目だよ。何かあったらどうするの?」と言う。

だから、心配性だということが確定した。



「それにしても、声を掛ける前、泣きそうな顔に見えたけど……何か言われたの?」

そう言われて、さっきの罪悪感がよみがえってきた。



眉をひそめてうつむくと、かがむようにのぞき込まれる。


「……シエルちゃん?」


次々と、最近振った人たちの悲しそうな顔が浮かんでくる。

そこには、アランも……


「どうしたらいいんだろう……私」

彼らは私に好意を抱いてくれているのに……


「傷つけたくないのに……」

あんな悲しそうな顔なんて、させくないのに……


「なのに、いつも……傷付けちゃう……」


傷付けない振り方が分からない。



その時、ふと前にディオンに言われた言葉が頭をよぎった。

『俺とお前が付き合ってるって事にした方が、お前にとっちゃ楽だと思うけどな』


その言葉を思い出した瞬間、慌てて首を振り、頭の中から追い出そうとする。



でも――こんな状況になってしまうと、その考えは良い考えだとも思ってしまう自分がいる。


この世界では、講師と生徒が付き合うのはよくある話だ。

付き合っているという噂が広まれば、自然と離れていくんだろう。


いっそのこと、本当に付き合ってるフリをしてもらう……なんて……



「シエルちゃん……」


心配そうに見つめるローレンの顔が入って来て、ハッと我に返る。


何考えてるんだろう、私……



それって、またみんなを騙すことになるじゃん。

前世の事やネックレスの事も隠しているのに、また隠し事が増えてしまう。

そんなのは……駄目だ。


こんなんだから、メイに絶交されたんだよね……

本当に私って駄目だな……

嘘ばっか重ねて……


「もう、どうしていいのか……分からない……」

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