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【大賞受賞作】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?~あなたがくれた幸せの呪い~  作者: 花澄そう


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手紙の謎10


向かい側の椅子に座るアランに小さく返事をする。

「……うん」


「やっぱそうなんや。ここ2,3日様子がおかしいもんな」

そう言われて机に視線が落ちる。


「なんかあったんやったら、いくらでも聞くで」

アランに頼るのはよくないと思う。

でも、こう言ってくれる人がいるというだけで――とても心強い。


「……ありがとう」

「心配なんていらんで」

そんな言葉に耳を傾ける。


「大丈夫や。シエルちゃんとメイちゃんなら、すぐ仲直り出来る。友達はケンカをして仲良くなっていくんや。だから今、もっと仲良くなろうとしてる所なんや」


「ケンカをして仲良くなる……?」

「そうや。俺が1番仲いいやつなんて何度ケンカしたか分からん位や。でも腹を割って話すから、なんだかんだ言ってそいつが一番仲いい」


そう言われて、ふと前世を思い返すと、その話に思い当たる節がいくつか浮かび上がってきた。


確かに、前世では何度もぶつかり合った友人がいた。

でも、ぶつかり合うたびに本音で話し合って、いつの間にか一番信頼できる存在になっていたんだっけ……



今世では言い合いやケンカなんて、1度もした事が無かった。

転生者という事もあって、クラスメイトは実際はうんと年下ばかりだったから、理不尽りふじんな事があっても本気になることは無くて、一歩引いていたからだろう。


でも、気付かない間に、精神年齢が追い付かれていたのかもしれない。

いや、もう追い越されていたのかも……



「大事なのはタイミングや。よく目を見て、しっかり話し合えばええ。ちゃんと相手の事が好きなんやったらそれだけで仲直り出来るはずや」


「うん……」


普通はそうなのかもしれない。


でも今回みたいに、ケンカの元となった原因を解決出来ない場合は……仲直りの未来なんて見えない気がする。


「何しんみりしてんねん。大丈夫やって!自信持ちや」

うつむくと励ますように明るい声を投げかけてくれる。


「1回ぶつかってみ。アカンかったらなんぼでも相談に乗ったる」

「……うん」


さっきよりも少し元気な声で返事をすると、アランは「ん」と言って私のトレーに豪華な海鮮丼の器を乗せてきた。



器の中には、いくらや大トロがぎっしりと盛られている。

ふと、アランのトレーを見ると、小さな肉うどんだけがぽつんと乗っていて、思わずキョトンとしてしまう。


「これって?」

置かれた海鮮丼を指さして聞く。


「シエルちゃん、ここ何日かちゃんと食べてへんかったやろ?やからしっかり食べ」


「い、いいよ!アラン、絶対それだけだと足りないでしょ?」

そう言って海鮮丼を返そうとした手は、アランの手に止められてしまう。


「ええねん。俺もプレミアム食べ放題やし、もし足りんかったらまた注文しに行くわ」

アランは、Dクラスのバッジの横に付けたプレミアムバッジを指で突きながら、ニカッと白い歯を見せて笑った。


「あ……ありがとう」

優しさに甘えることにした私は、クロワッサン一つとバターしか乗っていなかった自分のトレーに、海鮮丼を降ろした。


「で、魔力の調子はどうや?ラブは可愛いし、大人しいから預かってるんは全然ええんやけど」



ラブはまだアランの部屋で世話をしてもらっている。


私の魔力がまだ不安定なせいで、私の近くにいるとラブが体調を崩してしまうらしく、目が覚めてからもずっとラブに会えていない。


前は毎晩一緒に寝てたくらい、ラブは家族みたいだったから、凄く淋しい。


「ラブをみてくれてて本当にありがとう。

魔力は……次にディオンに会ったら診てもらおうと思ってたんだけど、急な休みに入っちゃったから……」


「あ~せやな。1か月くらい休みになったもんな」

アランは耳に付いているシルバーのピアスをツンツンと触り、あごに手を当ててしばらく黙り込んだ。


「シエルちゃん。あのさ……」

その言葉に海鮮丼を口にしてから目を上げる。


「シエルちゃんにとって、あの特別講師はなんなん?」

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