手紙の謎9
「ここを出たらやりたい事があるの。だから……」
「何それ……やりたい事と恋愛は関係ないでしょ?」
「あるの!」
「恋愛したらいけないやりたい事って何よ?そんなのある!?」
と言われてぐっと口を噤むと、メイは眉を下げた。
「……やっぱり……答えてくれないのね。シエルは昔っからそんなのばっかり」
その声は、驚くほどに震えていた。
「え……っ」
「私が全く気付いてないとでも思ってるの!?」
涙目のメイは目を吊り上げ、強い口調で言い放つから、私の体が固まってしまった。
「何年の付き合いだと思ってるのよ!!」
怒鳴られて、心臓がドドドと激しく鼓動する。
「シエル……、ずっと私に色々と隠しごとをしてるでしょ?」
その言葉に胸がギクッとした。
「大浴場には絶対に入らない。ずっと見られたくない痣か何かがあるのかと思ってたけど、何も無かった……。この前だって上の空で……でも話してくれない!そうやっていつもシエルは私に隠し事をする!!」
まさか、メイにこんな風に思われていただなんて……
驚きを通り越してショックを受ける。
「私はこんなに何もかも全部話してるのに、どうしてシエルは私に言ってくれないの!?どうしていつも隠し事をするの!?そんなに私が信用できない!?こんなので、親友なんて言えるの!?」
悔しさを耐えるように唇を噛んだメイの目じりには、涙が溜まっていて、罪悪感で胸が締め付けられる。
「信用できないとかじゃ、ないよ……」
怒りと悲しみに揺れるメイに、今すぐにでも何かをしてあげたいと思う。
なのに、どうしていいのか分からない。
「じゃあ言ってよ!何を隠してるの!?」
そんな言葉を浴びせられても、私は前世の事や闇魔法の事なんて言えない。
メイの、負担になってしまうのが、目に見えているから……
私は、言えない悔さに俯いた。
「そう…………。ここまで言っても、何も言ってくれないんだ……。じゃあ……もう、いいよ……」
メイがゆらりと立ち上がるのが視界の端に映り、ゆっくり顔を上げる。
すると、私を不服そうに睨む目がこちらを向いていた。
ずっと親友をやってきて、こんな目を向けられたことなんて一度も無い。
私の心の中が冷えて波立つのが分かった。
「シエルなんて親友じゃない!もう絶交するからっ!!」
部屋中に響くように叫んだメイは、すぐに踵を返して私の部屋から出て行った。
悲し気に涙を流すメイを引き留めたかったのに、引き留める術を持たなかった私は、一人になった部屋で再び床に視線を落とした。
…………
……
ザワつく学食の端で一人席に座ると、向かい側の席にトレーが置かれて目を向けた。
すると、アランが椅子を引いている様子が映った。
「どーしたんや、一人なんて珍しいやん。メイちゃんとケンカ中か?」




