手紙の謎8
その瞬間、一瞬で体が沸騰しそうになった。
だから、思わず叫んで否定をした。
「ち、違う!そんなわけ無いじゃない!!」
「シエル、いつになく必死だよ?好きなら好きだって言ってくれたら、私……」
「ディオンなんて好きなわけない!私は、誰とも恋愛なんてしない!!そんなの、前から言ってるじゃん!」
「またそれ?なんでいつもそんなに頑ななの?シエルにとって恋愛は悪なわけ?したきゃしたらいいじゃない!」
「し、したくなんて無いし!」
「今までは本当にそうだったかもしれないね。でも、今のシエルはそうは見えないよ」
そう言われて胸がギクりとした。
「べ、別に……本当に私は……ディオンの事なんか……」
言い返そうとするけど、私の口から出るのは、まるで自分自身にも言い訳しているような、弱々しい声だった。
するとメイは大きなため息をついた。
「また……、また私に嘘をつくのね」
「えっ……?」
また、って?
「それにさ、恋愛なんてするものじゃなくて、落ちるものでしょ!?」
「落ちる?」
「そうよ。好きになろうと思って好きになるんじゃなくて、気付いたら好きになっているものでしょ!?」
気付いたら……
好きに……?
メイの言葉が頭の中でぐるぐると回り、ふっと浮かび上がってきたのは、ディオンのドヤ顔で微笑む姿。
その顔を思い浮かべるだけで、胸が焦がれるように熱くなって、ギューッと心臓が痛くなるような感覚が広がっていくのが分かった。
でも、認めたくない!
絶対に違う!
慌てて頭を振り、ディオンの姿を振り払おうとしたけど、今度はメイが前に話してくれた会話が脳裏をよぎる。
『好きっていうのは、この人とずっと一緒に居たい、傍にいたいって思う事かな?って私は思ってる……』
その言葉が胸に刺さり、私は思わず頭を抱えた。
嘘っ……
もしかして、私はもう……メイが言うように本当に『落ちて』る……っ!?
もし……
そうだったとしても……私は……




