手紙の謎7
私はメイのセリフに、何とも言えない嫌な感情が溢れだした。
「ま……また?メイいつもそんなんじゃん」
メイが『好きかも』と言うのを、過去に何度聞いたか分からない。
だから、一瞬で胸の中で湧き上がった正体不明の動揺を隠そうと、軽く流すようにそう言った。
「違うし!今回は本気だし!」
「はいはい。もうそういうの聞き飽き……」
「本気だって言ってんじゃん!」
そう叫ばれて、私は思わずメイを見た。
そこに映ったのは、真剣な目で、思わず言葉を失った。
「……えっ、嘘……だよね?」
「嘘じゃないってば!シエルの意識が戻らなかった間、ここでカミヅキ講師と会う事が多くて、会えば会う程に好きになっちゃったの!だから今回は本気なの!」
メイは顔を赤くして、恥ずかしそうに手で口元を隠した。
その姿を見た瞬間、私の心臓は嫌な音を立てた。
焦ってベッドから勢いよく立ち上がり叫ぶ。
「だっ、駄目だよ!!」
「えっ?……何が?」
咄嗟に引き止める言葉を言ってしまって、メイの戸惑う声が返ってきたけど、私はどう答えるべきか分からなかった。
「え、えっと……、そ……それは……」
なんで引き留めてしまったのかも分からない。
自分で自分の行動に驚いてしまう。
でも、なんか嫌だ。
メイがディオンを本気で好きだなんて、すっごく嫌!
なのに、なんでこんなに嫌なのか、理由が自分でも分からない。
「メイには、もっといい人がいると……思う、し」
言い訳のような言葉を口にするけど、それが本音じゃないことは自分が一番分かっていた。
「何それ。私はカミヅキ講師がいいの!」
間髪入れずに返って来たメイの言葉に、胸が焼けそうになって、思わず胸元を強く掴んだ。
無理っ!
ディオンだけは、どうしても止めて欲しい……
でも、どうして?
なんでこんな気持ちになるの!?
私は、ディオンの事を『意識』している。
展望台の時も、誕生日祝いの時も……、思い返すと私は、ただの異性としてディオンを見ているわけじゃない。
でも、それだけのはず。
それ以上はない――はず。
なのに……
「でも……」
「なんで止めるわけ?好きな人が出来た時、いつもシエルは応援してくれてたじゃん!」
と言うメイは、ふと何かに気付いたように表情が変わった。
「まさかっ……!シエル……カミヅキ講師の事……!!」




